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後半部分は最高に興味深い:太りゆく人類 [科学]


太りゆく人類―肥満遺伝子と過食社会 ハヤカワ・ノンフィクション

太りゆく人類―肥満遺伝子と過食社会 ハヤカワ・ノンフィクション

  • 作者: エレン・ラペル・シェル
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2003/08/08
  • メディア: 単行本


肥満にまつわる科学についての本。前半部分は人類が科学を用いて肥満と戦ってきた歴史であり、後半部分は肥満にまつわる現在の状況となっている。
私の興味が偏っているから、前半は眠たくなるほどつまらなく、後半部分はものすごく興味深いというアンバランスな構成になっている。【目次】
第1章 肥満大国アメリカ―外科手術に臨むナンシー
第2章 邪悪な人間は太る―肥満と偏見の歴史
第3章 肥満は生まれつきか―肥満と遺伝子
第4章 肥満研究最先端―謎の飽食因子をさがせ
第5章 飢え―フリードマン、ob遺伝子を発見する
第6章 臨床の例外―パキスタンのいとこたち
第7章 やせ薬の命にかかわる副作用―フェン・フェン療法の教訓
第8章 世界に広がる肥満という病―缶詰をあけはじめたコスラエ島民
第9章 健康は胎内から―飢餓にさらされた胎児と新生児の将来
第10章 欲望から手の届くところに―食品業界の思惑
第11章 正しい選択―肥満の波を押しとどめるには

このうち、6章までは歴史中心の話なので、興味のある人以外は読み飛ばしてもかまわないと思う。人類が科学を用いて肥満に挑戦してきた歴史なので、興味があればすごく楽しい部分なのだろうが、悲しいかな私の興味はわかない。
帰りの電車で2回も寝てしまった・・・・
こういうときに読むのをあきらめる力が足りないと思う。小説の読みすぎで小説に毒されてしまったのかな。

後半7章からは興味を持って楽しめた。
まず、7章は薬による肥満との戦い。薬害を甘受しながら必死で努力してきたにもかかわらず、決定力がかけている現状がわかり、この面では絶望的になる。そして、その結果として、インチキ薬にだまされなくなるだろう。肥満に対する有効な薬は存在しないのだ。

第8章は発展途上地域に欧米化の波が押し寄せ、肥満から来る糖尿病、心疾患で死亡率が上がっているのが分かる。まるで、疫病によってインカ帝国を滅ぼしたピサロのような状況が肥満という現代病によって発展途上国で発生しているのだ。

第9章は妊婦が飢えるとその子供は太りやすくなるという衝撃の事実。妊婦ダイエットのようなばかげた行動に対する警鐘となっている。もちろん太りすぎの妊婦もよくないので、程々が大事なのだが・・・

第10章は子供のうちから顧客を囲い込み、健康に悪い食品を売り込もうとする食品会社の戦略の一端が描かれている。特に、子供に食事を選ばせることで健康に悪いが「楽しい」食品を売り込もうとする食品会社・外食チェーンの戦略を知ると自分の子供には多少厳しくても健康にいいものを食べさせたいと思うこと間違いなし。
子供好みのやわらかく、甘く、塩辛い食べ物に慣れさせておくと大人になってからもその商品の忠実な顧客であり続けるという怖い現実を知ることが出来る。

第11章は健康な食べ物の重要性と、肥満になりやすい罠に満ちた現代での注意が述べられている。ただし、この本はダイエット本ではないので、減量の方法には触れられていない。あくまで肥満が健康に与える悪影響と、肥満になりやすい環境について述べられている本である。

以上のように、前半は私の興味に合わなかったが、後半だけでも十分楽しめる一冊。ダイエットに役立ち沿うには無いが、食品会社の戦略にはまったり、インチキ食品・薬にだまされることはなくなるであろう。

☆☆☆★(☆三つ半)

第8章で肥満をかつての天然痘にたとえ、肥満に耐性のない発展途上地域の人が肥満に打ちのめされていく様を述べているのはジャレド・ダイアモンドである。名著「銃・病原菌・鉄」では天然痘が南米の文明を滅ぼし、病原菌に耐性のあるヨーロッパ人が少数で征服した歴史を描いたが、肥満も同じような結果を招きかねないことに恐怖を覚えた。
まだ読んでいない人はこちらもオススメの本である。

銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎

銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎

  • 作者: ジャレド ダイアモンド
  • 出版社/メーカー: 草思社
  • 発売日: 2000/09
  • メディア: 単行本



[ナショナル ジオグラフィックDVD BOX] 銃・病原菌・鉄(DVD3巻セット)

[ナショナル ジオグラフィックDVD BOX] 銃・病原菌・鉄(DVD3巻セット)

  • 作者: ナショナル ジオグラフィック
  • 出版社/メーカー: 日経ナショナル ジオグラフィック社
  • 発売日: 2007/06/28
  • メディア: 単行本



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