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SWF(国家ファンド)の正の側面 [opinion]

SWF(国家ファンド)について、山崎元氏のblogで述べられている。
http://blog.goo.ne.jp/yamazaki_hajime/e/1cba5bef89e17979bc8ee919346f236e
山崎氏は以下の点から反対しているが、私はSWFも一定の条件下では検討に値すると思っている。


山崎氏の反対の根拠は以下。
(1)国家に自分の資産を運用してもらう必要はない。民間で出来ることは民間で。
(2)国家で運用するのは民間で運用するより難しい。
(3)国家ファンドはカモになる(高い確率で損を出す)。
これに池田信夫先生が危惧している
(4)政府の不自然な利権・資金源になる。
を加えると国家ファンドの負の側面は大体列挙されているであろう。

これに対して、一般的に、国家ファンドの利点・正の側面は
(A)利益を出して国家財政に寄与することが出来る。
(B)国が直面する経済的問題に対してすばやく資金を供給できる
ということが言われている。

しかし、(A)は投資を促進する税制を取って、投資に資金を向けて薄く徴税する税制を作れば結果は同じなので必要性が少ない(負の側面(1))し、意思決定に政治的ハンデを負って(負の側面(2))、利益を上げることはたぶん難しい(負の側面(3))。
おそらく大きな穴を開けて新東京銀行みたいに進退窮まる恐れは大きいだろう。

(B)の側面にしても、サブプライムで弱った米国系金融機関に投資して利益を出すと共に世界経済の安定に資する働きが出来ればベストだが、民主主義国家では意思決定が難しい(負の側面(2))し、有力政治家の我田引水の恐れも大きい(負の側面(4))。
何の制約もなしにSWFを成立させると、中国の未公開企業の救済に税金が突っ込まれかねない恐れすらある。


ここまで見たようにSWF反対派はおそらく正しい。それでも私がSWFに一定の理解を示すのは、後藤田代議士、北畑次官の金融を理解しない発言に見られるように、この国の政治が経済の足を引っ張りまくっているからだ。
土建屋を優遇する政策は、雇用促進および献金増加を目指して積極的なくせに、日本の株価を上げる政策には見向きもしない。
株式譲渡税を低く保つことが諸外国から投資を呼び込む正の政策として評価されずに、金持ち優遇として府の政策として評価されてしまうのだ。


そうした惨状を解決するために、SWFとして一定規模の金額を株式市場で運営し、政治家に日本市場を高揚するためのインセンティブを与えるべきだ。
極端な話、SWFの一部が利権化して、政治家に黒い金が流れてもその結果東証株価が上昇し、失業率が減少すれば国民の利益になる。
今の極端にものづくりに寄った経済政策から、金融中心にシフトするには良いきっかけだと思う。

私の考えはベストではない。しかし、SWFの機運が盛り上がり、金融に注目が集まっているうちに国家として金融にコミットし、国家の政策を金融軽視から引き離す仕組みを作るのはありだと思う。


もちろん歯止めとして大損を出さない仕組みは大切だ。
最初は、市場ポートフォリオを原則とし、自由運用の割合をきわめて低く保てば大やけどはしないはずだし、それの運用益部分を政治家に任せればインセンティブにもなる。
この部分は専門でないので詳しく語れないが、SWFに反対するのではなく、SWFを前提として大損しない仕組みを考えても良いのではないだろうか。もちろんリターンはリスクに応じた小さなものでも良いと思う。

益を出すより損を恐れて国家経済を適切に運用してもらうのが主眼なのだ。


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タグ:SWF
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コメント 2

NO NAME

それって単に金持ちがもっと得するだけじゃ・・・
by NO NAME (2008-03-06 16:40) 

book-sk

国家が金融の足を引っ張らないことが金持ち優遇になるわけじゃないですよ。

非効率な産業に過度に肩入れせず、競争に任せたほうが日本全体としては確実に豊かになります。金持ちがもっと得しても、同じくらい普通の人が得をすれば何の問題もないと思います。
少なくとも年収600万前後の私のような立場の人は、国家が土建・農業に不必要にお金を使わない政策を取ってくれたほうがありがたいです。

旧来の非効率な産業を優遇するほうが、既得権者をもっと得させるだけで不公平ですよ。

最後に参考としてあげた資本開国論でも読んでみてください。
by book-sk (2008-03-06 23:02) 

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