本領の不思議譚:きつねのはなし [小説]
森見登美彦の短編集。お得意の京都を舞台に狐、水神、幻灯などを軸に構成されている。個々の短編自体には厳密なつながりはないが、キーワードでゆるいリンクが作られている。
正直言って青春の妄想大爆発小説であるデビュー作の
太陽の塔 (新潮文庫)はなじめなかったが、本作は非常に面白い。
今回の短編集は一口で言うと不思議譚。amazonのレビューなどではホラー小説集という評価も見られる。確かに怖い小説もあるのだが、ホラーというよりも不思議。不思議が突拍子もないため、ホラーの域にまで達している作品があるといえる。
京極夏彦のようなホラーを期待していると肩透かしを食らうであろう。本作は森見登美彦が描く一風変わった登場人物が織り成す、明るい百鬼夜行のようなどたばたを楽しむのが本来の楽しみ方である。
今回も京都を舞台に学生と思しき年の登場人物が全部の短編に登場しているため、筆者の変わった若者を描く力が遺憾なく発揮されている。
太陽の塔が好きだった人には間違いなく薦められるし、太陽の塔が肌に合わなかった人もこの才能ある作家を見限る前にもう一度試してほしい。
☆☆☆☆(☆四つ)
ホラーが好きな人には次の小説がオススメ。京極夏彦の中では一番怖いと思う。
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