子供の描写が秀逸:東京下町殺人暮色 [小説]
宮部みゆきの推理小説。東京の下町を舞台にし、刑事の子供が殺人事件の解決に奮闘する様子が生き生きと描かれており、好ましい子供らしさがうまく描写されている。
バラバラにされた腐敗死体をめぐって犯人を追いかける刑事とその息子を中心に物語が進行していく。
この作品では容疑者に魅力的な人物が多く登場しており、読後に不快感を感じることなく総会に読むことの出来るストーリーになっている。
ミステリなので、内容の詳細は避けるが、当初の容疑者と主人公である刑事の息子の交流の描写は心温まる内容であり、傍目にもあこがれる内容となっている。
ただ、この小説の問題は若干古いこと。
1990年の作品であるため、バラバラしたいの発見者が携帯で電話しないのはご愛嬌としても、謎に迫るための心理的考察の部分においては、現代ではこんな考え方をしないのではないかと思える内容が散見される。
宮部みゆきの小説でも「模倣犯」や「理由 (新潮文庫)」のように特上とは行かないが、少々古くても、正当派ミステリーとは若干異なっても、描写・人間の魅力によって安心して楽しめる佳作である。
☆☆☆(☆三つ)
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