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若き天才の悲劇:破軍の星 [小説]


破軍の星 (集英社文庫)

破軍の星 (集英社文庫)

  • 作者: 北方 謙三
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1993/11
  • メディア: 文庫



風林火山の孫子の旗を先頭に、優れた軍略に支えられた無敵の騎馬軍団が大活躍。
とはいっても、武田信玄の物語ではない。
太平記の英雄、北畠顕家が本書の主人公である。

騎馬軍団のくだりは北方謙三のフィクションであろうが、風林火山の旗を用いていたのは有名である。

16歳で陸奥守となり、21歳で戦死するまでの波乱に満ちた濃密な5年間を、渾身の力で描ききった傑作。
麒麟児と称される才能と、公家の名門に生まれた血筋を持ち、才能では足利尊氏を凌駕しながらも、周囲に裏切られ・絶望し続ける顕家。
最後は圧倒的な足利家に、敵わぬ事は分かりながらも戦いに挑むその姿には感動せずに読み進むことは出来ない。

北方謙三はこういった男の生き様を描くのはワンパターンといえるほどの大得意だが、この作品はその中でも上位に位置するほどの迫力と、切なさを与えてくれる。

また、本書は脇役の描写が絶妙。足利直義と新田義貞の描写は人物が良く描けており、他の太平記作品を読んだことのある人を大きく納得させてくれる。
足利直義のコンプレックスと兄への憧れが混じった複雑な性格や、強いのか弱いのかわからない新田義貞に関する納得させられる記述等は「私本太平記」等の他の作品で太平記を読んだ人にこそ楽しめる部分である。

大きな敵に圧倒的ハンデを負って立ち向かうストーリーだけに理不尽さを感じずに入られないが、そういった状況だからこそ感じることの出来る切なさと覚悟を味わうことの出来る作品。
筆者の太平記物の中でも一押しである。

☆☆☆☆★(☆四つ半)






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