せっかくの素材がもったいない:燃えよ!刑務所 [小説]
最高級の大間のマグロ、関アジ、氷見のブリを揃えながら、出てきたのは市販のカレールーを使ったシーフードカレー。
こんながっかり感を味わってしまった作品。
本書は、刑務所の過剰収容問題、刑務所民営化(PFI)、被害者よりも加害者の人権を重視する裁判の問題と、本格的社会はミステリが何本も書けそうな問題を扱っている。
しかし、現実味のかけらもなく作られた登場人物を用いて、とことん軽いノリで書いているため、ただのドタバタ小説になってしまっているのが惜しい。
人体改造、死神、死後の世界、囚人同士のプロレス興行、囚人を使ったB級映画の作成と、ただただ笑いを取に来ている場面が多すぎるのだ。
確かに、ドタバタ小説としてみれば、ノリもいいし、笑える場面もあるため、そこそこの水準の出来にはなっている。
しかし、最高級の天然素材を使って家庭のカレーを作ったところ、カレーとしてはおいしいものが出来たとしても、第一に思い浮かべるのは「素材がもったいない」だと思う。
本書においても、まさに第一感の感想はそれだった。
この小説は、ドタバタ小説を楽しむのが好きな人にはオススメできる。
しかし、社会派好みの人や人間の内面描写を楽しみたいタイプの読者だったら壁に投げつけたくなるだろう。
☆☆(☆二つ)
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