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議論の基本:論理トレーニング [哲学]


新版 論理トレーニング (哲学教科書シリーズ)

新版 論理トレーニング (哲学教科書シリーズ)

  • 作者: 野矢 茂樹
  • 出版社/メーカー: 産業図書
  • 発売日: 2006/11
  • メディア: 単行本


amazonの紹介は新版になっているが、私が読んだのは旧版。
以下の内容も旧版準拠なので、新版とは若干異なっているかもしれない。

本書は、哲学教科書シリーズとなっているが、哲学とは直接のかかわりは余りない。
内容は、すべての人にオススメできる論理についての初歩の教科書だ。

【目次】
1 議論の流れ(順接の論理 逆接の論理 ほか)
2 論証(論証の構造 論証の評価 ほか)
3 演繹(否定 条件構造 ほか)
4 議論を作る(批判への視点 論文を書く)

本書は4章で構成されており、例題として問題が多数掲載されてている。

「第一章 議論の流れ」は高校生の国語の問題のような内容が続く。
文と分の関係を把握し、文章に書かれた主張を正確に読み解くためのトレーニングが行われる。
第一章はどちらかと言うと前提なので、眠たくなる部分も多いかもしれない。

「第二章 論証」「第三章 演繹」からが本書の真髄。よくある間違いや、考えられる反論を挙げながら、論理的な説明をするための手法について分かりやすく示されている。
ここまで読むと、新聞やWeb上の文章における論理的な矛盾・齟齬を見つけることが容易になる。私の場合だと、新聞については特に突っ込みどころが多く見つけられるようになった。

「第四章 議論を作る」は今までの内容をまとめた実戦編。とはいっても、分量自体は少ないので実戦のための手ほどきの第一歩といったところだろう。

議論のルールブック 」が実際の議論に当たっての手法・マナーについて述べた本であるならば、本書は日本語で議論・主張をするための基礎の基礎を作るための本である。
議論のルールブック 」で書かれているような内容を守って、正しく議論をするにしても、本書で書かれている初歩の論理ができていなければ実りは薄い。

私もBlogを書いているが、本書を読むと過去に書いたBlogの文章が恥ずかしくてたまらなくなる。
日本語で文章を書いたり、議論をするなら必須の一冊である。
内容は難しすぎないので、社会人にはもちろん、高校生以上の人にはオススメできる。高校生にとっては国語の勉強にもなることは間違いないだろう。

最後にひとつ苦言を呈させてもらうと、本書は例題が多用されていて分かりやすいのだが、例題の回答・解説が薄すぎる。受験参考書では問題より解説が厚い方が優れているとされることを見習って、解説を厚く取ってもらいたかった。

☆☆☆★(☆三つ半)

余談だが、本書の例題ひとつを引用させてもらいます。
5人の容疑者に関して、次の①~④が知られている。そのとき、関口と中善寺の共犯がありえないことを背理法を用いて示せ。

中善寺と榎木津が共犯ならば、関口は犯人ではない……①
中善寺と木場が共犯ならば、関口は犯人ではない……②
榎木津も鳥口も犯人でないならば、中善寺も犯人ではない……③
鳥口が犯人ならば、木場も犯人だ……④

どう見ても京極夏彦の京極堂シリーズです。ありがとうございました。
(本当にこの例題は存在します)

文庫版 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)






他のブログの反応はこちら等。
論理トレーニング101題」とのセット書評が目に付きます。今度はこっちも読んでみたいと思います。
http://none70.seesaa.net/article/90402027.html
http://phisophica.seesaa.net/article/93114230.html

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