SSブログ

ゆとり世代が原作レイプを招く [opinion]

http://book-sk.blog.so-net.ne.jp/2008-05-03
のエントリでも気になったけど、小説原作のドラマ・映画は評判の良くないものが多い。
最近では小説原作のみならず、漫画原作でも映画化・ドラマ化するとひどい出来になるので「原作レイプ」と呼ばれたりしているらしい。

私が考えるに、原作レイプになってしまう原因の多くは理解力の不足している人が増えてきているからだと思う。

トーハンの2007年度ベストセラーランキング
http://www.tohan.jp/tohan-news/07-12-04.html
文芸部門
http://www.tohan.jp/tohan-news/07-12-04a.html
を見ても、理解力を要求されない作品が売れているのは明らかだ。
東野圭吾、宮部みゆきといったベストセラー作家が、ケータイ小説や劇団ひとりを下回る売り上げしか上げられていないのだ。中堅作家の面白い作品等は売り上げで見ると全然届いていない。

ここで、よく本を読む読者からは芥川賞受賞作ならともかく、東野、宮部は簡単に読める内容だろ?と突込みが入るかもしれない。
私の感覚ではそのとおりなのだが、それは多くの本を読まない人の理解力を甘く見すぎている。

最近では漫画すら理解できない人がいるらしいのだから。
http://news.livedoor.com/article/detail/2075067/
この記事で言われている漫画の読み方を習ったことがないから分からないというのは理由にならない。ストーリーを追う常識的な力があれば、面白いか否かはともかく理解できないはずはないのだ。
それが出来ないのは、変な順番で読んでストーリーが飛んだ時それをおかしいと感じられない、ストーリーを理解する力の不足に起因していると考えざるを得ない。

このように理解力の不足している、又は小説・漫画を難しいと感じる層が増えているために、映画化・ドラマ化に際しては内容を端折って分かりやすくすることが行われる。
特に無料で放送される地上波においては、なるべく多くの人に理解して見てもらう必要があることから、内容を薄めて簡単にする必要が生じる。

そうして出来上がった作品は、原作を楽しむことの出来る程度に理解力のある人にはスカスカに感じられ、Web等で原作レイプと酷評されることになる。

Webを見ていると感じられないかもしれないが、原作を楽しむことのできる理解力を持った人というのは、決して多数派ではない。TVの世帯普及率は98%超であるのに対して、単一の作品で1000万部を売るような小説は存在しないのだから。
(参考までに、日本の世帯数は大雑把に言って4000万~5000万)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%93%E5%8F%97%E5%83%8F%E6%A9%9F
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%BB%E3%83%A9%E3%83%BC

つまり、マーケティングとしては理解力の少ない人にも分かるように原作を薄めるのは当然で、ある意味、仕方のないことだといえる。

原作を好きな人がドラマを見るとがっかりするのは当然で、両者は別のターゲットに向けて作られているのだ。ドラマ化が発表されるたびに原作レイプと騒ぐのではなく、ドラマ化は原作をゆとりでも分かるように噛み砕いた別の作品であると、覚めた目で見るのが正しい対応であろう。




追記:こちらでも原作のアニメ化について述べられています。やはり思うことはいろいろあるようで……
http://ralf-halfmoon.jugem.jp/?eid=169

nice!(1)  コメント(4)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 4

tanishi

はじめまして。
先の『白夜行』の記事でご紹介いただいたtanishiです。

「漫画の読み方がわからない」とは、またオモシロイ見方があるのですね~。
次の展開を想像するのも物語の楽しみのひとつだと思っていたので、読み方と言われると「えぇ!?」となります(^^;ゞ
コマの順番がわからないだなんて~~!
じゃあ、本なら順番も何もないから逆に読みやすいのかな・・・??
こうなると、いずれドラマやアニメでも「すじがわからない」という理由で離れる世代がでてくるのかも知れませんね☆
by tanishi (2008-05-07 17:09) 

book-sk

>tanishiさんコメントありがとうございます。
漫画については、さすがに分からない人は少数であり、ある種極論であることは自覚してます。
ただ、小説に関して言えば、低年齢向けのライトノベルであっても作者はある程度読書家であることが多いわけですから、普段読書をしない人との間にギャップは大きく、理解できない人がいてもおかしくありません。

ドラマやアニメについても笑い事ではなく、将来はそうした議論が出てくるかもしれませんね。
現に洋画の字幕については、ついていけない人も結構いるみたいです。
by book-sk (2008-05-07 22:47) 

十日戎

はじめまして。
『ICO』でTB頂いた十日戎といいます。ありがとうございます。

 音楽でもドラマでも興味のない人でも目に触れる宣伝をしてその媒体に慣れてもらうのですから、作者としては不本意かもしれませんが、より身近に本を感じるためにはあるテーマに沿って有名作家が同人のように一冊作ったり、「○○賞受賞」といった話題以外でも提供する必要があると思います。
 太宰治の『人間失格』の表紙をデスノートの作者である小畑健が書いたところ、1ヶ月で7万5千部売れたとか。私が宮部みゆきを読まなかった理由は単純に本が分厚いイメージがあり、手に取るには腰が重かったからで、手に取った理由はまた単純に原作が好きだったからでした。

 私は理解力の不足という現象は、テレビという表現手段に対して小説を売り出すアプローチが昔と大して変わらなかった側面を指摘したいです。

 長文失礼しました。
by 十日戎 (2008-05-09 18:05) 

book-sk

>十日戎さん
コメントありがとうございます。

確かに、小説の売り方については進歩が見られないところが多くあり、いまだに「○○賞受賞」と言うのがメインであることは大きな弱点だと思います。
私も直木賞はお祭りとしてチェックしてますが、他の文学賞については何がなにやらと言う感じで余り宣伝がうまく行っていないのは肌で感じられます。

そういう意味では確かにドラマ化・映画化による宣伝もひとつの手法だとは思います。
ただ、「宣伝」と割り切るしかない現状がベストの形なのかどうかは別の問題だと思っています。

このエントリでも言いたかったことなのですが、ドラマ化・映画化された「宣伝」としての作品から原作と言う順ならなら問題ないのですが、逆だと非常に違和感を感じることが多いのです。
本作を見た後に宣伝を楽しむ人はいないので、当然と言えば当然直ですが……
現状では、「宣伝」と割り切るしかないかなと言うのがこのエントリでの結論なのですが、本当にそれが今後もベストの形であるのかは分かりません。

小説・漫画等紙媒体の読者の数と、地上波放送の視聴者の数では後者が圧倒的に多いので、現在の形式はやむをえないのかもしれませんが。
by book-sk (2008-05-09 20:26) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。