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激動の時代におけるそれぞれの選択:幕臣たちの明治維新 [歴史]


幕臣たちの明治維新 (講談社現代新書 1931)

幕臣たちの明治維新 (講談社現代新書 1931)

  • 作者: 安藤 優一郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/03
  • メディア: 新書


江戸幕府の幕臣たちが、明治維新に当たってどのような立場に置かれたのか、その後どういう生活を歩んだかについて書かれた本。
歴史の表舞台に出てこない部分について書かれているので非常に興味深い。
【目次】
第1章 徳川家の大リストラ
第2章 激動の幕末を見た御家人
第3章 静岡藩の消滅
第4章 西南戦争と江戸っ子気質
第5章 江戸ブームの到来

明治維新で江戸幕府が滅んだ後、旧幕臣たちには大きく三つの選択肢が有った。
1.新政府で役人になる
2.農業や商業を行う
3.大幅な減給を飲んで静岡(駿府)について行く

結果論から言うと、一番有利だったのは1の選択肢。新政府も人材が不足していたので、幕臣でも新政府にほぼ元通りの役職で就職できたらしい。しかし、この選択肢は裏切りのようで一番人気がなかったようだ。
逆に、一番厳しかったのが3の選択肢。それでも、この選択肢が一番人気で今までの惰性から徳川家に使える人が多かったとのこと。
2の選択肢は才能が必要なために難しく、ほとんどの人は失敗して駿府で徳川家に復帰し、3に合流する結末が多かったとのこと。

ここで興味深いのは、有力な旗本ほど1を選んだ人が多く、位が低い者の多くは一番不利な3を選ぶ人が多かったとのこと。世襲制の世の中でも、有力な人のほうが先を正確に見通せていたのは興味深い。ただの保身の可能性も高いが、それでも現状がうまく言っている人のほうが正解に近づけたのは非常に皮肉だ。
この結論からすると、「若者を見殺しにする国」で言われているように、現状をリセットするような戦争等の大異変が万一起こった場合でも、現状いい位置にいる人のほうがリセット後もいい位置につける可能性が高くなるのだろうか、などと考えてしまう。

後半は、当時の幕臣の心情や幕臣としての活動を中心に話が進む。
幕臣・江戸市民の心情は新政府に対する反感がすごく、敵の敵は味方との理論から西南戦争では西郷隆盛びいきだったという話や、幕府は実は人的レベルが高く、駿府についていった人材のおかげで維新から廃藩置県までの間、静岡藩は日本有数の有力藩であった話など興味深い話が続く。

小説では、幕府に抵抗し続けた彰義隊や、函館戦争後に新政府の高官となった榎本武揚などが取り上げられがちだが、実はそうした人は少数派で、多数派は現状維持的な行動を取っており、駿府についていった後、苦境の中で生活していったことがよくわかる。

本書は表舞台に現れない幕臣たちの行動を知ることの出来る良書である。

☆☆☆★(☆三つ半)

この本を読んで当時の幕臣たちの現状を知った後に、楽しむと良い小説はこちら。
当時の江戸の人の新政府に対するよくない感情などははっきりとわかる。

幕末あどれさん (PHP文庫)

幕末あどれさん (PHP文庫)

  • 作者: 松井今朝子
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2004/02/03
  • メディア: 文庫






他のブログの反応はこちら等。
新書としては、目新しい観点を提供してくれると言う、ポジティブな反応が多いようです。
http://banryu.blog51.fc2.com/blog-entry-117.html
http://walk74.hamazo.tv/e1155875.html
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