web時代の必読書:論理トレーニング101題 [哲学]
本書は「新版 論理トレーニング (哲学教科書シリーズ)」の問題集版であるが、順番としては本書を読んでから「新版 論理トレーニング (哲学教科書シリーズ)」を読むことを薦める。
本書のほうが具体的なため分かりやすいし、解説も豊富なので始めての人には理解しやすいためである。
なお、「新版 論理トレーニング (哲学教科書シリーズ)」のエントリはこちら
http://book-sk.blog.so-net.ne.jp/2008-04-28
本書は論理の初歩について分かりやすく述べた本であり、文章を読む人にはぜひ読んでおいてほしい本である。webの発達した現在においては、掲示板やblogで玉石混交の文章を読む機会が増えているため、必読の書であると言える。
【目次】
1 議論を読む
第一章 接続表現に注意する
第二章 議論の骨格をつかまえる
2 論証する
第三章 論証とはどのようなものか
第四章 演繹の正しさ・推測の適切さ
第五章 論証を批判的にとらえる
本書は玉石混交の文書をweb上で読むことが多くなった現代において必読の書であると述べた。
本書は二部からなるが、その両方が文章でなされる主張を正しく読み解くのに必須の知識である。
第一部は議論を正しく読むスキルについて学ぶことが出来る。
私のような弱小blogではなく、所謂アルファブロガーのようにコメントがいっぱい付くブログにおいては、エントリに対して頓珍漢なコメントが付くことが珍しくない。確信犯や荒らしのようなコメントを除くと、頓珍漢なコメントはエントリの内容を正しく理解していないことが多い。
しかも、blogや掲示板のようなweb上でかかれる文章は文字数の制約から端折って書かれることが多いし、人目を引くためわざと誤解されやすいような書かれ方をされることも少なくないので、文章を正しく読むことは本・新聞に比べても難しくなっている部分もある。
このようなweb上の文章の特徴を考えると、文章・議論を正しく読むことはますます重要になってきている。そのため、本書で学び、正しく文章を読む力を向上させることは有益である。
第二部は論証について書かれており、演繹・推論の正しさの検証と、文章への正しい批判について学ぶことが出来る。
特に第五章で学ぶことの出来る文章に対する正しい批判についてはweb上で文章を読んだり、情報発信をする人には非常に有益である。
blogのトラックバック機能や掲示板においてやり取りされる議論を読んでいると、お互いに自分の言いたいことだけを延々と書き連ねていたり、主張されていないポイントについて批判していたりと不毛な議論を目にすることは数多い。
今まで、違和感を感じながらもなぜかは言い表すことが出来なかったが、本書を読んでなぜだか分かった。
不毛な議論においては立論に対する批判が正しく行われていないのだ。
ある人の意見(立論)に対して、異なる自分の意見を述べること(異論)はさほど難しくない。しかし、立論に対して正しく批判すると言うのは意外に難しい。なぜなら、第一部でも述べたように正しく立論を理解せねばならないし、しかも、意味のある批判を行わなくてはならないからだ。
このように、正しい批判は難しいため、web上の議論では正しく批判が行われず、お互いが自分の言いたいことだけを主張し合って、文章のうまい下手で賛同者の数が替わってくる不毛な議論が行われることも多い様に見受けられる。
本書で学び、正しい批判が出来るようになると、そうした不毛な議論においてもどこが問題であるかを見抜くことができるようになり、効果的な情報発信や見た目に惑わされない情報の取得が可能となる。
このように、本書で学ぶことは本を読むだけでなく、web上の文章を読む上でも有益なことばかりであり、webで文章を読んだり、情報発信したりすることが多い人はぜひ読んでみてほしい。
本書は入門編であり、内容は易しく、解説も充実している。しかし、本書の内容を完全に自分のものにするのは難しく、私もこのエントリで論理的な文章がかけているかは自信がない。それでも、本書で学んだことは自分にとって役に立ったと心から思うことが出来る良書である。
☆☆☆☆☆(☆五つ。満点)
他のブログの反応はこちら等。
一番下のリンクは司法試験に挑戦中の人によるblogであるが、旧司法試験に挑戦したがダメだった私からしても、本書は論文試験にも有効であるように見えます。10年前に本書に出会えていればよかった……
http://bigt23.blog75.fc2.com/blog-entry-175.html
http://blog.goo.ne.jp/blackmages01/e/113533b1ffd22489cdf0922ad4d672fe
http://loompas.blog96.fc2.com/blog-entry-347.html
わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる:東大、京大、北大、広大の教師が新入生にオススメする100冊
でも第95位にランクアップされている。
論文・参考書を読むことの多い大学生にはすごく有意義だと思います。
http://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2008/04/100_0953.html
効果的な反論・批判といったことに関しましては、論理学がベースの野矢さんとはちょっと違いますが、レトリック術(修辞学)をベースにしている香西秀信さんの『反論の技術』あたりもオススメです。
香西さんは意識的に挑発的・露悪的な物言いをする書き手なので(むしろ、それが、あえて読者の側から反論を引き出そうという態度にも見える)、合う合わないはあると思いますが、俺自身は読んで損はないと思っております。
by pranky (2008-05-22 22:27)
>prankyさん
コメントありがとうございます。
「反論の技術」ですか。今度図書館で探して見ます。
こうやって類似の本を薦めていただけると非常にありがたいです。
by book-sk (2008-05-23 19:04)