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ジェットコースターロジカルミステリ:きみとぼくの壊れた世界 [小説]


きみとぼくの壊れた世界 (講談社ノベルス)

きみとぼくの壊れた世界 (講談社ノベルス)

  • 作者: 西尾 維新
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2003/11
  • メディア: 新書



西尾維新らしいライトノベル・ミステリ
現実にはありえない名前の登場人物が、圧倒的なテンポで会話と論理を繰り広げ、読者を独特の西尾維新ワールドに引き込んでいく。このスピード感とミステリの王道とも言うべきロジックに圧倒されること間違い無しの作品である。

本書の一番の魅力は、主人公である櫃内様刻とヒロインの一人病院坂黒猫との掛け合いのすばらしさから構成されている。世界に存在する様々の問題を、自分のおかれている状況から最善の努力を持って解決しようとする櫃内様刻。ラットレースのように報われない事が多いように見受けられるが、既に発生したことは嘆かず、悔やまず、常にクールに最善の答えを選び続ける。

それに対して、世界からの途絶を最も恐れる、才能あふれる保健室登校生徒の病院坂黒猫。「分からない」と言うことを何よりも恐れ、それが故に自分の周りで発生する理不尽を何よりも嫌う。回りの悪評にひるむことなく、自らの世界の安寧を保つために努力するその姿は、見方によっては神々しくも見える。

事件は桜桃院学園と言う狭い世界の中の、上で紹介した二人と被害者を含めた6人の中で発生すると言う、非常に限られた舞台になっている。しかし、その狭いはずの舞台で、登場人物は十分にキャラクターが発揮されている。しかも、登場人物を通じて語られるロジックの広がりは無限の広さも感じさせられる。本格ミステリは余り読まないが、本格ミステリ好きも、ライトノベル好きも、どっちも嫌いな人でも楽しめる可能性がある稀有な小説なのかもしれない。かもしれないと言うかたぶんそうだ。

この本の各所で語られるように、人は面白いはずのものにもいつかは慣れ、刺激が飽和してきて面白さに飽きてしまう。そして、次なる楽しみを探して飛び回り、新しい面白さを見つける。しかし、新しい面白さもいつかは飽き、更なる新しい面白みを探す。これを何度も何度も何度も何度も繰り返すうちに、面白いものに飽きる悲しみのみを感じるようになってしまう。自分が身に着けた面白いものを省みることなく。
読書もそういう側面を強く持っている。本格ミステリに飽き、歴史小説に飽き、恋愛小説に飽き、ギャグ小説に飽き、バイオレンス小説に飽き、ホラーに飽き、経済小説に飽き、不思議系に飽きる。読書は面白さに飽和し、新しい面白さを探すと言う、この小説に出てくる一説にぴったりの行為に見える。既存の小説にどこか飽きているなら、新しい試みとして本書を手にとって見るのも悪くないのではないだろうか。

この本は読む人を選ぶことは間違いない。表紙も手に取るにはちょっと勇気が居るし。それでも、あなたの前の問題には二つの選択肢が存在している。
一.この本は見た目が痛いので読まない。
二.本の外見はカバーをかければ見えない。内容はいいのだから手に取ってみよう。
どんな選択をしようとも自由なのだが、私が進めるのは断然二だ。

☆☆☆☆(☆四つ)

よった勢いで本書の文体から得られるエネルギーそのままにエントリを書いたけど、冷静になってみると、やっぱり、こっぱずかしい。




他のブログの反応はこちら等。
他のエントリと異なり、若そうな人が多いのにびっくり。そして、他に読んでいる本のエントリを見ると、私の知らない本がずらり。
確かに、高村薫とか北方謙三とか黒川博行とかと、西尾維新を同時に読む人は少ない気もするが…。
http://www.ktrmagician.com/archives/2008/08/post_410.html
http://freedomdays.blog.so-net.ne.jp/2008-07-28-1
http://blog.goo.ne.jp/ryu-sei1973/e/5c2a8ca5c888006f882da65dc502a048
http://d.hatena.ne.jp/iris6462/20080720/1216520667
http://d.hatena.ne.jp/genesis/20071030/p1
http://revilog.com/2007/10/010940.html
http://majomajo.cocolog-nifty.com/blog/2006/11/post_b861.html

でも、ロケスタ社長ブログでも分かるように、若者意外でも楽しむことは出来るのですよ。
http://blog.livedoor.jp/kensuu/archives/50624822.html



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