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短編の名手伊坂幸太郎の中でも珠玉の一品:死神の精度 [小説]


死神の精度 (文春文庫 (い70-1))

死神の精度 (文春文庫 (い70-1))

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 文芸春秋
  • 発売日: 2008/02/08
  • メディア: 文庫



Sweet Rain 死神の精度 コレクターズ・エディション

Sweet Rain 死神の精度 コレクターズ・エディション

  • 出版社/メーカー: VAP,INC(VAP)(D)
  • メディア: DVD



映像化もされた伊坂幸太郎の短編集。
短編の名手としては横山秀夫の評価が高いが、私の考えだと、今、一番短編にさえを見せているのは伊坂幸太郎だろう。
以下に感想を書くが、はっきり言ってすばらしいの一言に尽きる気がする。

死神の精度
死神と藤田
吹雪に死神
恋愛で死神
旅路を死神
死神対老女

本書の主人公は千葉と名乗る調査部の死神。
死神は一週間対象の人間を観察し、「可」と評価して一週間後に死なせるか、「見送り」と評価して死なせるのをやめるのかを決める。とはいっても、死神は人間が死のうが生きようが関係ないので、人間界に送られた死神は大好きなミュージックを聴くのに忙しく、適当に「可」とする死神が多い。
そんな中、千葉は一応最後まで対象を調査し、私情を挟みつつも評価を下すことにしている。

そんな千葉が最後を看取る5人でつながる連作短編集。厳密には全員が「可」とされるわけではないので、最期を看取る人間は5人ではないのだが。

DVDのタイトルがSweetRainとなっているように、千葉が、人間界にやってくる日はいつも雨か雪で晴天の天気を拝んだことがないという設定になっていて、そのことが死神に選ばれた人間の心情とあいまって、独特の切なくなる世界観を形作っている。

私はこの短編ならどれも超一流の水準にあると思うが、一番好きなのは「死神対老女」。今までの伏線と伊坂流の物語間におけるゆるいリンクが頂点を極め、最後のシーンでは思わず涙する。
伊坂幸太郎らしく、エンタテイメントとして面白いのに加えて、人間のすばらしさ、明日への希望を抱かせてくれるすばらしい作品である。

次点は「死神と藤田」。2作目に書かれているこの作品で、本書における設定の深さを理解でき、しかも男のロマンを感じることが出来る。
その他、密室殺人に挑んだ?「吹雪に死神」なども、ミステリとはいえないが、ある種のアンチミステリとして楽しめる。

ここで言及しない作品がダメというわけではなく、どの作品も他の短編週に一つ入っていれば、それだけでその本を買ってよかったと思えるくらいの水準に達している。
伊坂幸太郎のファンは既読だろうが、初めて伊坂幸太郎に入るなら実は一番いい作品かもしれない。
日本一の短編の名手、伊坂幸太郎をじっくり堪能してほしい。

☆☆☆☆☆(☆五つ。満点)




他のブログの反応はこちら等
低い評価のエントリもありましたが、伊坂幸太郎の世界を評価するエントリが多く、好きな人にはたまらないことが判明。好きな作品は人それぞれで結構ばらけてました。
http://ameblo.jp/myfirstdiary/entry-10127061600.html
http://nynndaful-life.cocolog-nifty.com/blog/2008/08/post_6868.html
http://kuronekokupi.jugem.jp/?eid=2096
http://blog.goo.ne.jp/tbinterface/2ad7c0bce8edde153b84f5bb4ed0dfa1/37
http://blog.goo.ne.jp/lavish_gifts/e/7e1e295ff88d0407fbba83c1c3af0766
http://blog.goo.ne.jp/sisen_in/e/2ad7c0bce8edde153b84f5bb4ed0dfa1
http://deagle.blog10.fc2.com/blog-entry-1018.html


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