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憎めないヤクザの主人公:疫病神 [小説]


疫病神 (新潮文庫)

疫病神 (新潮文庫)

  • 作者: 黒川 博行
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2000/01
  • メディア: 文庫



「暗礁」のエントリはこちら
http://book-sk.blog.so-net.ne.jp/2008-07-24

黒川博行の建設コンサル二宮シリーズの第一作。
大阪弁のテンポいい会話は本書でも見事に描かれており、後述する背景の確かさとあいまって、社会派ミステリの側面を持つエンタテイメントとして高い水準にある。

建設現場への嫌がらせに対してヤクザを使って対処する「サバキ」をメイン業務とする建設コンサル二宮と、「サバキ」を受ける二蝶会のヤクザ桑原。
二宮のもとに、産廃処理場建設に当たって、水利組合から承諾の判子をもらう依頼が来たことをきっかけに、二人はヤクザと大手ゼネコンの癒着の中で騒動に巻き込まれてゆく。

本シリーズの特徴は次の通り。
シリーズの舞台設定は巨悪・社会問題を背景にした社会派ミステリとして設定されている。しかし、主人公のコンビのキャラクターは主人公の二宮はとことん情けなく、相棒の桑原はふざけているかのように軽く・面白い。これらの組み合わせにより、ただ古いだけのハードボイルドや社会派とは一線を画す、しっかりとした重たい素材に、軽さと笑いのコーティングがなされ、その組み合わせの妙から独自の味を形作っているのである。

登場人物の会話は全て大阪弁でなされているが、わざとらしい点は全く無い。大阪弁のヤクザというキャラクターは紋切り型に陥る可能性が高いのだが、本書に出てくるヤクザを含めた大阪弁のキャラクターには不自然な点も、ワンパターンな点も、過度に笑いに走っているところも無い。
自然な笑いと、本職の迫力がきっちりと出ているところがすばらしい。

後にシリーズ化されるだけあって、本書の主人公のコンビはキャラクターとしての魅力にあふれており、すばらしい小説に仕上がっている。
ヤクザが出てくる割には、人死には出ないので、おどろおどろしいのが苦手な人でも安心して読める。
松本清張などの社会派が好きな人には、是非挑戦してもらいたいシリーズである。

☆☆☆★(☆三つ半)




他のブログの反応はこちら等。
熱狂的なファンがたくさん居る作家であることが分かります。
暴力団というより、ヤクザといったほうがぴったりと来る、本書の人物造形は絶賛されています。
http://www.kanshin.com/keyword/1494912
http://hardrockkahe.blog116.fc2.com/blog-entry-16.html
http://gyaaaa.blog52.fc2.com/blog-entry-295.html
http://blogs.yahoo.co.jp/hiroto_yam/29458818.html
http://blogs.yahoo.co.jp/tindy148/20997994.html
http://blogs.yahoo.co.jp/firoswi/10975129.html



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