年寄りじみて来た梁山泊の面々:楊令伝 四 雷霆の章 [小説]
楊令伝第1巻のエントリはこちら
http://book-sk.blog.so-net.ne.jp/2008-06-07
楊令伝第2巻のエントリはこちら
http://book-sk.blog.so-net.ne.jp/2008-06-15-2
楊令伝第3巻のエントリはこちら
http://book-sk.blog.so-net.ne.jp/2008-07-12
団塊世代の作家北方謙三が描く水滸伝の世界も時代が経過し、梁山泊の生き残りがだんだん高齢化してきて団塊の世代のようになっている。
客観的な実力はともかく、自信に満ち溢れ、いい意味でも悪い意味でもパワフルで、第一線にこだわりぬいている。そういう老人達になってきている様が描かれている。
前述の通り、団塊の世代化が進んでいるのは、呼延灼、公孫勝、宣贊、史進そして官軍側の趙安。このあたりの登場人物は年をとり、性格が変わってきているのだが、その代わり方が団塊の世代にありがちなパターンで本当にドキッとする。これは、意識的か無意識かは知らないが、筆者の経験から描かれているのであろう。
個人的には余りかっこいい歳の取り方だとは思わないが、リアリティには裏打ちされている。
逆に、歳をとってもぜんぜん変わらないタイプの登場人物としては童貫が描かれている。水滸伝が終わり、楊令伝になって、一番インパクトのあるキャラクターであるので、今後ますます目が放せないキャラクターである。
ストーリーとしては、官軍が北と南で二方面作戦を行うことが中心である。北は金国と共同して梁山泊軍が趙安と戦い、南は呉用が方臘を勝たせるために全力で童貫に立ち向かう。官軍側も、水滸伝の頃からの武将は減ってきており、弱体化しているような印象を受ける。この二つの戦いは本書では完結せずに、次巻に続くため、行方は気になるところである。
今まで同様本書でも、別れと新たな人物の登場が描かれており、分かれの代表は今までのストーリーで重要な役割を果たしてきた王母。ついに最期を迎えることになってしまったが、今まで子午山に集った仲間達に惜しまれながら送られるので大往生の一つの形として綺麗に描かれている。
また、阿骨打も近々死にそうな様子が描かれており、こちらも目が放せない。
他方、新たな登場人物のうち、一番魅力があるのは蕭珪材。新たな国を背負って立つにふさわしい立派な将軍である。北方謙三の「楊家将」、「血涙」からつながる背景を持つ、魅力的な人物として描かれている。
本書は、今までどおり、歴史物に名を借りたキャラクター小説である。
無敵の将軍や、誰にも負けない豪傑、智謀が冴え渡る軍師、絶世の美女、魅力あふれる君主。ライトノベル顔負けの強烈なキャラクターがあふれている。ラノベしか読まない人でも本書は受け入れられそうな気がする。
なお、私が次巻以降で私が気になっているのは方臘軍の許定。今までの経緯から、この将軍がキーになりそうな気がする。呉用と同じく方臘に取り込まれたという設定も可能だろうが、ここ一番で何かをやりそうな気がしている。
☆☆☆☆(☆四つ)
他のブログの反応はこちら等。
どのエントリも絶賛です。気に入らない人はここまで読む前に投げているだろうから、絶賛の比率が高まるのは当然だが、それでも、ここまで読んできた人には楽しめるものに仕上がっているのは間違いない。
http://alasukacom.livedoor.biz/archives/51191794.html
http://yumemi.blogzine.jp/zatudansitu/2008/08/post_5061.html
http://d.hatena.ne.jp/yakusou/20080716/1216215493
http://blog.goo.ne.jp/bluezazie/e/bec6838c4e0fb523c880b10578e33398
http://bookworm.at.webry.info/200804/article_5.html
カスタム検索
はじめまして
トラックバックを有難うございました
丁寧な感想 文章に感心致しております
by 夢見 (2008-09-02 08:09)
>夢見さん
コメントありがとうございます。
今後とも何かあったら見に行かさせてもらいますね。
by book-sk (2008-09-02 22:17)