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プロ将棋棋士のアカウンタビリティ:最新戦法の話 [将棋]


最新戦法の話 (最強将棋21 #)

最新戦法の話 (最強将棋21 #)

  • 作者: 勝又 清和
  • 出版社/メーカー: 浅川書房
  • 発売日: 2007/04
  • メディア: 単行本



将棋本の中ではファンに一二を争う高い評価を得ている本書。内容を見て、その評価の高さに納得できた。
本書は、定跡を学ぶための本ではない。プロ将棋界の現在の状況をファンに説明した本なのだ。これに目を通しておけば、NHK杯の将棋がより楽しめるようになることは間違いなしだ。

「振り飛車には角交換」、「桂の高飛び歩の餌食」昔だと当然と思われていたセオリーが近年の将棋界においてはどんどん覆っている。
長い間将棋から遠ざかっている人や、そもそもの初心者には今のプロ将棋はなかなか理解しにくいであろう。かくいう私も、NHK杯などを見て、特に序盤はどういうところがすごいのかが全然わからなかった。

本書は、素人にはついて行けないほどに高度化したプロ将棋の戦法の一端をファンに理解しもらいたいという筆者の重いがひしひしと伝わってくる。
プロ将棋は、野球・サッカーと同じくファンあっての物なので、ファンに理解してもらわないと競技として成り立たない。この点に危機感を抱いた筆者は鋭いと思うし、筆者の思いは十分に本書で果たされている。
プロの将棋を見たけれども何がすごいかわからないという人は、是非一度本書を読んでみてほしい。


以上が、本書の位置づけに関する説明であるが、内容としては将棋界のみならず、一般社会に置き換えても思い当たることが多い気がしている。
まず、今の将棋界においてはタブーが無くなっている。昔は、格式・常識・暗黙の了解と言った物に縛られていたのだが、近年は実利優先・実態の正しい評価によって、強い戦法が正しい評価を得ることができるようになっている。
ゴキゲン中飛車も居飛車穴熊も後手一手損角替わりも、その戦法自体は決して目新しい物ではないが、偏見の壁に阻まれて正しい評価が得られてこなかった。
今は優秀な戦法は見た目がどうあれ優秀だと評価されるようになってきている。

次に、すでに終わったと思われていた定跡にその先が見つかってきていることである。相矢倉、石田流などは昔からの評価が固まったと思われていたのだが、今の常識に照らしてさらに深く研究すると、もっと先があったと言うことがわかってきている。
オールドエコノミーが新技術で脚光を浴びることがあるように、すでに終わったと思われていても、見る人が見れば新しい鉱脈が眠っていることもあるらしい。

このように将棋界に起こっている事例がわかりやすく説明されている。本書は図面も多いのだが、図面・棋譜を追うのが苦手な人でも、地の文を読んでいるだけで十分楽しめる。
そして、やっぱり羽生はすごいと思わせる一冊です。


☆☆☆☆★(☆四つ半)

将棋自体にあまり詳しくない人はこちらから入るとプロ将棋を楽しむことができるようになるだろう。

頭脳勝負―将棋の世界 (ちくま新書 688)

頭脳勝負―将棋の世界 (ちくま新書 688)

  • 作者: 渡辺 明
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2007/11
  • メディア: 新書



エントリはこちら
http://book-sk.blog.so-net.ne.jp/2008-03-25


他のBlogの反応はこちら等。
(ポジティブな評価)
http://d.hatena.ne.jp/retuner640/20080820/1219245870
http://blog.goo.ne.jp/kurouma_2006/e/1db178515898f009e3579b98e00a2a0e
http://d.hatena.ne.jp/huraibou/20071204/p1
http://hoenaga.cocolog-nifty.com/hoenaga/2008/05/post_0057.html
梅田望夫さんも、本書に言及しておられます。私より遙かに強い人らしくもっと深い内容に触れておられますが……
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20080208/p1
プロの人もこんな評価をしてます。
http://chama258.seesaa.net/article/41333125.html

将棋を知っていれば楽しめること間違いなし。気力に自信の無い私のような人でも十分に楽しめます。むしろ、本書はそういう人も含めて対象にしていることがわかると思いますよ。








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