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国の経済政策に関する最良の入門書:霞ヶ関埋蔵金男が明かす「お国の経済」 [経済]


霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」 (文春新書 635)

霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」 (文春新書 635)

  • 作者: 高橋 洋一
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/05
  • メディア: 新書



今話題の高橋洋一氏が一般人向けにわかりやすく書いたのがこちら。
経済など全然わからない人でも、わかりやすい様に書かれている。そのため、本書は中学生から大人まで万人が気軽に読める作りになっている。

本書でも出てくるが、官僚が国の政策をゆがめるに当たってよく使う手法の一つに、細かなデータを出してきて、重箱の隅をつついて信憑性を落とすことで、正しい政策を葬り去るという手法がある。
詳しくは後述するが、本書はそうした手法とは逆に、図表や細かなデータは出てこないが、本質を鋭く見据えた良書である。



【目次】
第1章 「埋蔵金」とはなにか(埋蔵金の意外な名付け親 歌って踊れるエコノミスト ほか)
第2章 国のお金はどう動くのか—財政編(アメリカはエゴの国 B/Cは事後しかはかれない ほか)
第3章 国のお金はどう動くのか—金融編(日銀総裁は「誰を」より「何を」が大事 まず「目標」の明示を ほか)
第4章 公務員制度改革の闘い(公務員の権限が大きな日本 財務省にゴマをする「財政タカ派」 ほか)
第5章 国家を信じるな(本当に地方ができないことを国がやる 「国」「道州」「市町村」という三層構造 ほか)


まず、本書は第1章で新聞・ニュースで一時期よく出ていた「埋蔵金」とは何かを説明している。一口で言うと、「埋蔵金」とは国のバランスシート上に計上された、資産の過剰である、平たく言うと会計の純資産に概念としては近い。ただし、その実態をわかりやすく説明したニュースは話題になっていた時期でも多くなかったと思う。
本書のタイトルに「埋蔵金」と入れたので、その意味をわかっていない人に向けたわかりやすい説明を入れたというのが本章である。

次の第2章、第3章は国の財政政策・金融政策についての問題点を明らかにしている。なぜ失われた10年が発生してしまったのか、なぜサブプライムにあまり投資していなかった日本の景気が減速しているのか、なぜ小泉改革時は景気がよかったのか等がよくわかる経済の説明がある。
さらに、この2つの章では日本の財政・金融政策の駄目な点が浮き彫りにされている。
本書によると、麻生新内閣が予定している補正予算による財政出動などは、何の効果もなく無駄以外の何者でもないことがわかる。

第4章は現在の官僚制・政治の問題。私は、どちらかというと政治の問題の方が多いように見受けられたが、人によっては官僚の問題を多いととる人もいるだろう。

最終第5章は地方分権に向けた提言だが、こちらは付け足しのような物で、若干議論不足が目につく。筆者の理想を最後にちょっと述べていると言うところだろうか。


本書のポイントは、景気対策に予算を使って景気を浮上させようとする財政政策は何の意味もなく、金利を使って景気浮揚を目指す金融政策で無くてはならないのに、日本政府・日銀は財政政策に固執し、適切な金融政策を行っていないという点である。
インフレ・ターゲットを導入し、1%~3%のインフレを日銀に目標として課してしまえば、経済成長は容易なのに、その至極もっともな意見を主張する政治家は自民党にも、民主党にも見あたらない。こんな絶望的な状況なので、日本経済における当面の見通しは暗い。

以前、日銀総裁を選ぶに当たって、民主党が不同意を繰り返して問題になったことがあった。
しかし、今の日本の不況を脱出するためには、手続き上の些末な問題にこだわるのではなく、さっさと日銀法を改正して、日銀は政府の作成したインフレ率を達成するためだけの機関にしてしまうべきだ。今のままでは、日銀の「独立性」を盾に、適当な金融政策が繰り広げられ、デフレ不況から脱出できない状況が続くであろう。


今の日本政府の状況はまるで、野手を一切替えることができないという条件で優勝する野球チームを作れと命じられているに等しい。絶望的な状況だが、政治家もそういった状況をわかっていないので、ある意味同罪だ。
私も少し前のエントリで書いたが、老人に最適化された日本では、デフレが心地いいのはわかる。しかし、そうしたいびつな政策はどこかで破綻せざるを得ないし、無理を続ければ続けるだけ、破綻したときの痛みは大きくなってしまう。

このように、本書を読むと、今の日本政府の駄目なところが明らかになる。
マスコミは基本的なことがわかっていないので、本書の様な良書で基本的な知識を身につけ、正しい政治判断ができるようになっておくのは有意義であると思う。

☆☆☆☆★(☆四つ半)

最後に、私は役所の中で仕事をしたことがあるのが、机の上に六法全書や政官要覧(政治家・官僚の名簿みたいなもの)を置いている役人は多いが、経済の本・解説書等を机の上に置いている役人は少数派であることを知っている。
実は、筆者が言うように、官僚が経済の知識が少ないというのは冗談ではなく本当のことであるかも知れない。


他のBlogの反応はこちら等。
(ポジティブな評価のエントリ)
http://diary.jp.aol.com/applet/uvsmfn2xc/1115/trackback#trackback
http://blog.livedoor.jp/takahashikamekichi/archives/52087463.html
http://blogs.yahoo.co.jp/singleandover40/55681357.html
http://blog.goo.ne.jp/hironagano/e/7a53b556d9e4740a9b880edb8ab7c7fb
http://nuhyakueco06.blog56.fc2.com/blog-entry-1336.html
http://gotorin.blogspot.com/2008/08/blog-post_17.html
http://petapetahirahira.blog50.fc2.com/blog-entry-282.html
(やや懐疑的なエントリ)
http://fund.jugem.jp/?eid=710

ここにあげたのは好意的なエントリが多いが、やや批判的なエントリも多い。
批判のは大きく2別され、リンクでも張ったように主張が理論に偏っていると言うものと、筆者の経歴からしてそんな主張はおかしいのではないかと言うもの。筆者個人を攻撃するようなエントリには同意できないが、そういう意見もあることは確かである。
ただ、ポジティブに評価している人が多いし、読みやすいので、選挙が近い今だからこそ読んでほしい。とは言っても、本書に賛同する人に選挙で与えられた選択肢は無いに等しいのだが。






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