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桜庭一樹が描く殺人者:少女には向かない職業 [小説]


少女には向かない職業 (創元推理文庫 M さ 5-1)

少女には向かない職業 (創元推理文庫 M さ 5-1)

  • 作者: 桜庭 一樹
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2007/12
  • メディア: 文庫



本書を読むのに必要なのは少年・少女時代を思い出すことと人を殺す重みを想像することです、と私は思った。

本書は閉塞感に悩まされて殺人を犯す少女の心理と、殺人を犯してしまってからの心の重みを独特のタッチで描ききった桜庭一樹の傑作である。以下にも書くが、同じようなテーマを選んだ作家は多いが、本書は桜庭一樹の特長がいい感じで出ている。分量以上に読み応えのある本である。

本書のストーリーは、アル中でろくでなしの父親と育児放棄の気がある母親という絶望的な家庭に育った主人公の大西葵が、その環境を打破するために父親を殺してしまう。そのことを知った、同級生の宮乃下静香も同居のいとこを殺したくて、葵とともに殺人を犯すことにすると言うもの。

本書の見所は、第一の殺人を犯すまでの閉塞感を打破しようとする主人公と、第一の殺人を犯してからの主人公の心情の変化、そして第二の殺人へと向かう葵と静香、二人の少女の間で展開されるミステリと急転直下のラスト。
薄い本ではあるが、ラストまで一気に読ませる力を持った本でもある。

私が今年読んだ本の中で、本書と同様のテーマを扱った本がある。貫井徳郎の「空白の叫び」である。
エントリはこちら
http://book-sk.blog.so-net.ne.jp/2008-05-29

桜庭一樹の本書は、貫井徳郎の本に比べて、少女らしい繊細な心情と、男女の違いを感じざるを得ない女特有の事情、そして、女性の強さ・したたかさまでがきっちりと描かれている。
そして、このように重たいテーマを扱ってもどんよりと沈み込むような後味の悪さも存在しない。これが筆者の味であり、よくあるテーマでありながら、読む価値のある筆者独特の部分を形作っている。

まだ本書を読んだことのない人は、筆者が描く思春期独特の心情と、殺人という行為の重み、そして、二人の少女の奇妙なつながりを味わってみるのがおすすめである。本書が580円であることを考えると、ほかの本が本書を超える価値を得るのは容易なことではないだろう。

☆☆☆☆★(☆四つ半)

他のBlogの反応はこちら等。
(どちらかというとポジティブな評価のエントリ)
http://yukitarowww.jugem.jp/?eid=1236
http://nyangoro.cocolog-nifty.com/nyanmemo/2008/09/post-0d08.html
http://asuparacat.blog42.fc2.com/blog-entry-145.html
http://ameblo.jp/hitopito/entry-10117518611.html
http://ameblo.jp/aokoxxxooo/entry-10128418779.html
(ニュートラルな評価のエントリ)
http://ameblo.jp/baabamama/entry-10131329825.html
http://books.at.webry.info/200809/article_8.html
http://ameblo.jp/aoarashi21/entry-10134492832.html

意外と手放しで大絶賛というエントリは少ない。ミステリファンはいろいろと敷居が高いと言うことがわかる。ただ、悪い評価を下している人はほとんどいない。
本書については、ミステリということを考えずに読むのがよいのかも知れない。






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