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サブプライム問題後の経済状況を正確に把握できる良書:資本主義は嫌いですか [経済]


資本主義は嫌いですか―それでもマネーは世界を動かす

資本主義は嫌いですか―それでもマネーは世界を動かす

  • 作者: 竹森 俊平
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2008/09
  • メディア: 単行本



サブプライムローン問題で世界の市場はとんでもないことになっているが、そうした問題がなぜ起こったのか、そして、何が今世界市場で起こっているかが理解できる良書。
直接的な投資指針を示した本ではないが、この本を読んでじっくり考えると、自分なりに後悔しない決断を下すことができるようになるはずだ。


【目次】
第1部 ゴーン・ウィズ・ア・バブル
(錬金術の今昔物語;住宅バブル低金利犯人説を追う;バブルの積極的役割;グローバル規模で資金が動く;縮小する世界経済;世界経済を拡大する道)
第2部 学会で起こった不思議な出来事
(利益追求を強める銀行とファンド;金融新技術発展の功罪;流動性のジレンマと人間行動)
第3部 流動性―この深遠なるもの
(組み込まれた自動不安定拡大装置;経済学への教訓;サブプライム危機の拡大過程)


本書は3部構成になっているが、どの部も非常に読み応えがある。
まず、第1部は現在のサブプライムローン問題の引き金になったCDOとは何かがわかりやすく解説されている。「米国の低所得者向けの不動産ローンで返済不能者が多く出たために、ローン会社が危機に陥った」から問題が発生したと言う、最低限の認識しかない人はここを読むだけで一気に問題の本質がわかる。
本来は日経新聞がこの程度のことは解説してほしいのだが……。

そして、第1部の目玉として、なぜサブプライムローン問題をきっかけに世界経済が一気に冷え込んだのかについて詳しい説明をした後、今後の世界のとるべき道について、二つの異なる興味深い学説が紹介されている。
詳しくは本書を読んでほしいが、現在の問題は新興国の成長率が投資リターンを上回り、新興国が貯蓄過剰になることによって、金余りになりバブルが発生してしまうのだ。

一つの説は、新興国で成長率を上回る投資リターンを得られるように経済構造を変革していく、難しいけれども世界経済が成長していくモデルを築き上げること。アジアのように輸出中心の発展ではなく、東欧のように資本輸入を中心にした発展を先進国・新興国ともに、政治・経済全てでバックアップして作り上げるのだ。この解法だと、世界経済は発展し続ける。インデックス投資でもしていれば大もうけできるであろう。
もう一つは、全世界で成長率を下げること。何の努力もいらないが、世界経済は停滞する。この道をたどっているのなら、投資はするべきでないという結論になる。
個人的には後者の道を突っ走っているように見えて、非常に恐ろしい。

第2部は、現在のサブプライム問題を事前に予言していた経済学者の集まり。経済学の碩学はこの結末を見通すことができていたのだ。これは純粋に解説・読み物としておもしろいのだが、日本で発言力のある経済学者に、このような力を持った人がいないのが残念でならない。

第3部は現在問題となっている、流動性の問題と重要性を語る。本章の結論はおもしろく、流動性が無くなると、ファンダメンタルに支えられた正当な価値を下回る価値しかつかなくなり、経済がどんどん縮小していく。
現在の問題を解決するには、流動性を確保し、市場がそれを確認すれば解決できるのだが、第1部で示されたように、非常に被害が大きいため、流動性がうまく確保できないのだ。
おそらく中央銀行が市場に大量の資金を供給するとともに、資本を守る政策によって投げ売りを防ぎ、資金が必要とされる場面を少なくする政策がとられるのであろう。
資本を守る政策は全ての金融機関にできるわけではないから、今後しばらくは今の流れが続いてしまうのは確実であろう。

このように、私のように経済の門外漢でも本書を読めば、現在の問題がはっきりとわかって自分なりの判断を後悔しないように行えるようになる。
内容もわかりやすいし、私のように投資を行っている素人には必読と言っていい本である。

☆☆☆☆☆(☆五つ 満点)


他のBlogの反応はこちら等。
池田信夫先生のblog
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貞子ちゃんの連れ連れ日記
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(ポジティブな評価のエントリ)
http://bestbook.livedoor.biz/archives/50652243.html
http://blog.goo.ne.jp/harunakamura/e/a910c6593a10b6477b6dae8eb9e8154f
http://d.hatena.ne.jp/lough-maker/20081006/1223297666
(ニュートラルな評価のエントリ)
http://nuhyakueco06.blog56.fc2.com/blog-entry-1461.html
http://t-miz.cocolog-nifty.com/diary/2008/09/post-b0e0.html

淡々と感想・知識を述べているエントリも多いが、本書はバブル経済を理解するための最良の書という最大級のサンジを与えているようなエントリも多い。私も、経済学を専門で学んだことのない人が、バブルについて考えるには、本書は外せないと思う。






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