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経済についての記述がめちゃくちゃ:ローマ人の物語 迷走する帝国 [小説]


ローマ人の物語 32 (32) (新潮文庫 し 12-82)

ローマ人の物語 32 (32) (新潮文庫 し 12-82)

  • 作者: 塩野 七生
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/08/28
  • メディア: 文庫



ローマ人の物語 (33) (新潮文庫 (し-12-83))

ローマ人の物語 (33) (新潮文庫 (し-12-83))

  • 作者: 塩野 七生
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/08/28
  • メディア: 文庫



ローマ人の物語 34 (34) (新潮文庫 し 12-84)

ローマ人の物語 34 (34) (新潮文庫 し 12-84)

  • 作者: 塩野 七生
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/08/28
  • メディア: 文庫



文庫版が出る度に読んでいる「ローマ人の物語」。私の本シリーズに対する感想は、出来不出来が激しいと言うこと。塩野七生は私が見るに、思い込みに基づいて記述しているとしか思えない箇所が多く、それがいい方に出れば読み物として最高なのだが、本書のように基本的な箇所の記述がはっきりしないと疑問符を抱えたまま消化不良を起こしてしまう。

私が本書で一番疑問に思ったのは、経済についての記述。
塩野七生は、貨幣の質が落ちたことを指導者の悪政であると断じ、帝国の経済力が落ちたためそのような政策に出たのだと説明する。その上で、金利が12%から4%まで落ちたことで、ローマはデフレになっていたと説明する。

この時点で私は理解不能になってしまったのだ。
もし、ローマがデフレだったならば、貨幣をじゃんじゃん鋳造してマネーサプライを増やさなければならないはずであり、貨幣の質を落としたのは大正解の政策のはずだ。
逆に、皇帝の経済政策上の失政として貨幣の質が落とされたならば、金利は上昇するのが普通の考え方である。

貨幣の質を落とすのは何が何であろうと「悪」であり、デフレという経済上の打撃を受けたのもその「悪」のせいだという思い込みで書いているとしか思えない。戦場のシーンなどは思い込みがいい方に作用しやすく、読み物としておもしろくなることもあるのだが、このように意味不明の文章を書かれると読者は戸惑うだけである。

日本人なら、江戸時代の新井白石の経済失政を知っているはずだと思う。新井白石は道徳観から貨幣価値を上げ、デフレを招いてしまったのだ。
日本史に詳しくないにしても、現在の国家が、何の価値もない紙を国家の信用力を持って紙幣として通用させていることを考えると、貨幣に含まれる貴金属を減らすことが一概に悪であるとは言えないのはもはや常識なのだが……。

カラカラ帝のローマ市民権を全属州民に与えた政策については、人道主義から絶賛される評価を一蹴し、きちんとデメリットのみであったことを伝えているのに、経済はめちゃくちゃ、軍事制度の評価もここでは書かないが私には怪しく見える。

この様に、本書は結構当たり外れが大きい。そして、「迷走する帝国」は明らかに外れだと言える。
ちなみに、私は、今までのシリーズなら「ハンニバル戦記」が一番のできであると考える。

この当たり外れの激しさが、本書を単行本ではなく、文庫本で読もうと考えてしまう原因の一つなのだ。

☆☆(☆二つ)


他のBlogの反応はこちら等。
(ポジティブな評価のエントリ)
http://kingear.blog17.fc2.com/blog-entry-1826.html
(ニュートラルな評価のエントリ)
http://blog.livedoor.jp/dido21/archives/51116704.html
http://sunsetsunrise.seesaa.net/article/106509427.html
http://jasmines.tea-nifty.com/pine/2008/09/post-d2dd.html
http://blog.goo.ne.jp/takawatasho/e/e38c909ab066d8df04f3a3374cddd841
(他の巻に比べてネガティブ評価のエントリ)
http://www.villagewood.net/blog/archives/000901.html
(賛否両論のエントリ)
http://fuwaku-columun.seesaa.net/article/106371072.html

私のような見方は少数派のようです。私は本書で筆者の評価がいまいち当てにならないと感じた疑問符を持ち続けながら読み続けてしまったのですが……。







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コメント 2

うっしい

ローマ人の物語は5巻のハンニバルのところで終わっちゃってその後読んでないです。いつか読もうと思います。
by うっしい (2008-11-30 00:15) 

book-sk

>うっしいさん
たびたびのコメントありがとうございます。
ローマ人の物語は、私が今まで読んだところで言えば、ハンニバルとカエサルが大きなヤマなので、そこまでは自信を持ってオススメできます。

そこから後は、まぁ、そこそこに。若干偏ったところもあるので、合わない人は厳しいと思います。
by book-sk (2008-11-30 07:44) 

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