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ビジネス書としては失格:上司は思いつきでものを言う [社会]


上司は思いつきでものを言う (集英社新書)

上司は思いつきでものを言う (集英社新書)

  • 作者: 橋本 治
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2004/04
  • メディア: 新書



このタイトルを見てどう思っただろうか?
全くその通りと同意しただろうか、それってどういうことかと疑問に思っただろうか、そういうところもあるよなと反省しただろうか、とにかくタイトルに惹かれる人は多いと思う。
そして、タイトルに惹かれて、それを満喫したら中は読む必要がない。
そういう本なのだ。

【目次】
第1章 上司は思いつきでものを言う(「思いつきでものを言う」を考えるために・ いよいよ「上司は思いつきでものを言う」 ほか)
第2章 会社というもの(誰が上司に思いつきでものを言わせるのか・ 上司は故郷に帰れない ほか)
第3章 「下から上へ」がない組織(景気が悪くなった時、会社の抱える問題は表面化する・「下から上へ」がない組織 ほか)
第4章 「上司でなにが悪い」とお思いのあなたへ(「上司はえらくて部下はえらくない」というイデオロギー・儒教―忘れられた常識 ほか)


2004年の出版当時1948年生まれの筆者は56歳。しかも、29歳の時に作家デビューするまでもサラリーマン経験なし。こんな人がろくに調べもせずに、まともな会社論が語れるわけがない。
本書は、しっかりと会社の実情を調べた形跡は全く見られず、自分が作家として接する編集者を見た部分と、思いつきで書いた部分によって成り立っている。
はっきり言っていつの会社の話をしているんだと思わざるを得ない記述のオンパレードだ。

筆者の主張では、上司は自分で決める権限を持っておらず、上に上げる権限だけを持っていて、最終的な決定権は社長にしか無いことになっており、しかも、上司は過去の失敗の責任をとらされないために反対を繰り返した上で思いつきでものを言うことになっている。

現在民間企業に勤める人なら、そんなのは10年~20年前の会社だと思うのではないだろうか。今の会社では一定程度権限規定は明らかになっていて、自分の権限内なら(根回しはいるかもしれないが)判断できるようになっている。
筆者は作家という自由業なので、サラリーマンに対して蔑みや僻みが混じった視点を持っているのかもしれないが、少なくともバブル崩壊を切り抜け、今また不況に直面しながらもがんばっている企業の多くは、筆者が言うよりはるかにまともで有能だ。

また、筆者は上司が思いつきでものを言い、部下がそれを真に受けて振り回される原因に儒教を挙げているのだが、その説明の中で、平安時代に儒教が貴族の間でしっかりと根を下ろしたという、通説と違う内容をさらっと当たり前のように書いているなど、筆者の認識に関わらない部分もかなり怪しい部分が多い。

文章自体も、筆者がやや純文学寄りの作家のようなので、悪文ではないのだが、論理的と言うよりも、感覚的・冗長な部分が見られる。情景描写には向いているいい文章だと思うが、意見を主張する文章としては、決して読みやすいものでは無い。

はっきり言って、タイトル以外は見るところがない。読んだのは時間の無駄だったと思う。

☆(☆一つ)


ここからは余談だが、個人的には出版社はこういう本を新書の形態で出してほしくないと思う。
私のイメージでは、新書は専門書の入り口の入り口という位置づけなので、一般的な学説や、つたないながらもデータに基づいた主張等がメインになっている内容を扱ってほしいと思っている。本書のようなエッセイに近い文章は文庫の形態で出版してくれれば、読む前と読んだ後でこんなにギャップを感じなくてすんだはずだ。

別に決まりがあるわけではないのだが、amazonのようにネットショッピングが発達して、必ずしも第1章を立ち読みしてから買うことが一般的ではなくなった今、外見や本の形態で大きな路線を外さないような工夫をしてほしい。


他のBlogの反応はこちら等。
(ポジティブな評価のエントリ)
http://bookcites.blog106.fc2.com/blog-entry-222.html
http://blog.livedoor.jp/cmt_soqd/archives/575758.html
http://yaplog.jp/redcontinent/archive/403
http://suegaki23.blog111.fc2.com/blog-entry-87.html
http://blog.tebunko.com/?eid=160383
http://hinamixx.blog59.fc2.com/blog-entry-252.html

(ネガティブな評価のエントリ)
http://blog.goo.ne.jp/eliesbook/e/2e6d01f5b79de099f9ce9dce856764a1

ポジティブな評価のエントリが多くてびっくり。これはビジネス書としては失格だと思うのだが、内容的に共感を呼ぶところがおおきかったため、評価が高くなっているのであろうか。
これを読んで何かを得られた感じはしないし、内容もエンタテイメントとしておもしろい者ではないので私個人は苦手なのだが、こういう人のエントリは少数です。







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タグ:橋本治 新書
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