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腐りきった人々を明るく描く:悪果 [小説]


悪果

悪果

  • 作者: 黒川 博行
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2007/09
  • メディア: 単行本


黒川博行の直木賞候補作。
大阪府警を舞台にして、筆者らしい大阪弁で物語は進んでいく。ストーリー自体は警察の汚職をテーマにした重たいものなのだが、筆者らしい明るい描かれ方をしている。


本書のストーリー
警察の権力を悪用し、自らの私腹を肥やしている主人公の堀内は、大阪府警に勤務している。同じく悪徳警官の同僚伊達とともに、ヤクザが主催するバッタ撒きの賭場を摘発する所から物語は始まる。
堀内は、摘発した賭場の客に学校法人の理事長がいたことから、その弱みにつけ込んで金儲けを企むが、学校法人の理事長がヤクザの賭場に入り浸っていたのには理由があった。
堀内と伊達のコンビが自らの私欲のために謎を解き真相に迫る。
二人は大金をつかむことはできるのか?
悪徳警官をはじめとした悪人たちの末路はどうなるのか?
いろいろなことが気になり、読み出したら一気に読んでしまう本である。


本書の登場人物はほとんどがある種の悪人である。
少なくとも清廉潔白の主要な人物は登場せず、全ての人が私利私欲のために欲の皮を突っ張らせて、様々の陰謀を巡らす。
腐りきった人物のオンパレードなのだが、大阪弁のテンポが良い会話のせいなのか、暗い感じは受けず、明るい雰囲気に満ちている。

明るい雰囲気とは言っても、伊坂幸太郎のような若者の明るさではなく、おっさんの明るさではあるのだが。

本書のテーマの一つが警察の汚職。
巻末の参考図書にあるように、ある程度の実際の事件を下敷きにしている。
そういった意味では、佐々木譲の北海道警察シリーズと同じテーマなのだが、黒川博行が大阪府警を舞台に描くと悲壮感は減っている。
私を含めた大阪人は、お上に過度の期待を抱かないからかもしれないが、本書の読後感は悪くない。

ハードボイルド・ミステリとしては良くできているし、ハードボイルドにありがちな独りよがりの描写も少ない。
大阪弁のおっさんに抵抗がないミステリ好きならきっと楽しむことができるだろう。

筆者の作品の中でも傑作の部類だと思うし、「私の男」とぶつかって直木賞を取れなかったのは残念。
平凡な相手なら直木賞にも届いていておかしくないデキなのだが……。

☆☆☆☆(☆四つ)

【参考】
同じく警官の汚職をテーマにした佐々木譲の「笑う警官」のエントリはこちら
http://book-sk.blog.so-net.ne.jp/2008-04-23


他のBlogの反応はこちら等。
(ポジティブな評価のエントリ)
http://ameblo.jp/indi-book/entry-10161303410.html
http://blog.livedoor.jp/yocching/archives/50654447.html
http://tigersandcatlover.blog.eonet.jp/default/2008/09/post-dffa.html
http://blogs.yahoo.co.jp/tindy148/35670073.html
(ネガティブな評価のエントリ)
http://kotodomo.exblog.jp/8207940
http://blog.goo.ne.jp/mint_time/e/3b6e3a40c6662b415424117b619c4033

ネガティブな評価もあります。主人公に感情移入できないとか、他のシリーズに比べて重々しいとか。
しかし、私は筆者の代表作たり得ると思うし、気軽に読めるエンタテイメントとして、人に勧めることのできる作品であると評価しています。








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