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陰謀史観?の三国志:秘本三国志 [小説]


秘本三国志〈上〉

秘本三国志〈上〉

  • 作者: 陳 舜臣
  • 出版社/メーカー: 毎日新聞社
  • 発売日: 2004/02
  • メディア: 単行本



秘本三国志〈下〉

秘本三国志〈下〉

  • 作者: 陳 舜臣
  • 出版社/メーカー: 毎日新聞社
  • 発売日: 2004/02
  • メディア: 単行本



「レッドクリフ」で脚光を浴びた三国志。
本書は日本人の多くが「三国志」と聞いてイメージする「三国志演義」ベースの作品である、吉川英治の「三国志」や横山光輝の漫画版「三国志」等とは異なり、正史「三国志」をベースに陳舜臣の味付けで小説化されている。

あらすじは三国志のあらすじそのものなので省略するが、本書の特色をつかめるように、巻末の解説から筆者がこの時代についての見方を述べた部分を一部引用する。
(前略)
 私も曹操を伝えられるほどの悪人とは思わない。だが、稀代の大英傑とも評価しない。成功したオポチュニストの一言に尽きるのではないか。さらに、ヒイキ目に見れば、近代を開く可能性があった人物とも言えよう。比叡山を焼き、石山本願寺を攻めた織田信長が、曹操に酷似するようだ。そして、どちらも近代を開く一歩手前で、やはり時代を乗り越えることができなかった。
 これは、彼に哲学が欠乏していたからにほかならない。
(中略)
 そもそも、天に二日無く地に二王なしという信念を持つ中国で、なぜ相当期間にわたって三国分立の状態がつづいたかといえば、英雄が多すぎたという答えが返ってくるようだ。
 私は逆に、三国時代には、天下統一の器量をもった、特別傑出した大天才が出現しなかったためだと言いたい。
 二流の英傑たちが天下を争い、それだけに愛嬌があり、曹操はその中でもっとも変わり種であった。


陳舜臣は上記のものの見方に基づき、三国志の英雄を突出したものとは描かず、天下を治めるには足りないが天下の三分の一なら治められると言う見方で三国志の英雄を描いている。
そこに、本書の特徴である、五斗米道・仏教の宗教家の力を大きく評価して、陰謀史観気味に物語が構成されていく。本書の主人公が五斗米道の教祖・張魯の母である小容であることからも、筆者が宗教の力を強く描いていることがよくわかる。


本書は寧州(南蛮)での猛獲と諸葛孔明の戦いや、五丈原での司馬仲達と諸葛孔明の対立を対決を演出するだけで実際に戦う気はなかった八百長であるとし、関羽を部下には優しいが目上の者には逆らいたくなる任侠道の精神をもったならず者と描くなど、独特のものの見方が出ている。

一般的な三国志しか知らない人には、奇異に映るかもしれない。

しかし、私には意外なほどにしっくりきた。
例えば、私は、従来の三国志演義ベースの三国志ではスーパーマンとして描かれることが多い諸葛孔明が何故評価されているのかが理解できなかった。私は今でも諸葛孔明は三国志の中でもっとも過大評価されている人物だと思っている。
本書では諸葛孔明を行政の才能はあるが、軍事は全くの不得手であると描くなど、私でも一応納得できる構成になっている。「出師の表」は、国内をまとめるために司馬仲達と結託して演出した八百長であるとしたことで、私が謎に思っていた「天下三分の計」と「出師の表」の矛盾も解消している。

本書は物語ではあるが、正史をベースに構築されているので、物語としての破綻は「三国志演義」ほどではなく、読み応えがある。
三国志演義ベースの物語しか読んでない人は、是非挑戦してほしい。新たな「三国志」を見つけることができるはずだ。

☆☆☆☆(☆四つ)

他のBlogの反応はこちら等。
(ポジティブな評価のエントリ)
http://akichi24.blog103.fc2.com/blog-entry-191.html
http://scherzi.exblog.jp/9699179/
http://musashitosousyuu.blog43.fc2.com/blog-entry-95.html
http://kanga.jugem.cc/?eid=350
http://blog.goo.ne.jp/azumando/e/dbcd34e523de47e97cf8801fa3493d9a
http://fuwaku-columun.seesaa.net/article/26223890.html
http://blogs.yahoo.co.jp/raystorm1996ftc/2527370.html

やはり本書の特徴は正史ベースであると言うこと。
他の三国志本との比較も多く、いろいろつながりで読みたくなる一冊である。







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