興味本位のタイトルだが、中身はまじめな提言:人にいえない仕事はなぜ儲かるのか? [社会]
地下経済の研究では第一人者の門倉貴史が描く本書。
タイトルからすると、地下経済・裏経済についておもしろおかしく書いた本に見えるかもしれないが、本書の実態は非常にまじめな提言を行っている本である。
【目次】
第1章 野球選手はなぜ個人会社をつくるのか
第2章 長者番付に載る人、載らない人
第3章 サラリーマンの副業はどれだけ有利か
第4章 会社はどれだけ社員と国にお金を払っているか
第5章 税金を払わなくていい仕事の種類
第6章 地下ビジネスの担い手たち
第7章 先進各国の税体系
第8章 どのような税制が最も望ましいか
本書のテーマはずばり税制。
第1章~第4章で現在の問題点を洗い出し、第7章・第8章で門倉流の解決方法を提案している。
もちろん、筆者が書いた他の書籍と同じように、おもしろおかしく書かれてはいる。
例えば、「さおだけ屋は何故儲かるのか?」山田真哉の「さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学」とは異なり、本当の理由が書いてある。
一部の人には有名だが、多くのさおだけ屋は「さっき刑務所から出てきたんやけど、ゴム紐買ってくれへんか」という伝統的な商売の由緒正しい後継者だ。
筆者はトラブルになるのを避けるためか、まじめな業者が多いが、一部そういうトラブルもあると書いているが、どうヒイキ目に見ても情報弱者を搾取する商売であることには違いない。
そのほかにも、"合法"エステと"違法"エステのサービスは何が違うか?そして、"違法"サービスの部分は何故儲かるのかという話などが取り上げられており、おもしろい話を読みたい人のニーズも十分満たしてある。
しかし、"違法"エステのサービスが何故儲かるか?野球選手が個人会社を作る理由、サラリーマンの副業が売り上げ以上に儲かる理由に共通する税金の問題に対する筆者の主張は真剣そのもので、しかも説得力がある。
日本の財政状況では、増税は避けられない。しかし、今の日本の税制が向かっている方向は、少数の高額所得者が多くの税金を負担するやり方なのだ。
筆者はこの状況に対して、労働意欲を失わせるモノであると主張し、代わりの提案を行っている。
興味を失わせてはいけないので替わりの提案は明らかにしないが、この提案は「ベーシック・インカム―基本所得のある社会へ」でも触れられていたように思う(若干記憶が曖昧だが……)。
筆者は本書で税金の使い道については書いていないが、ベーシックインカムとも親和性の高い面白い税金の払方を提案している。
軽く読める割にはきらりと光る箇所のある良書である。
☆☆☆★(☆三つ半)
参考:ベーシックインカムについて書かれた数少ない書籍「ベーシック・インカム―基本所得のある社会へ」のエントリはこちら
http://book-sk.blog.so-net.ne.jp/2008-01-22
他のBlogの反応はこちら等。
(ポジティブな評価のエントリ)
http://plaza.rakuten.co.jp/tanakama19/diary/200808060002/#trackback
http://d.hatena.ne.jp/wk27/20060711/1152566255
http://dbdc.seesaa.net/article/49777316.html
(ネガティブな評価のエントリ)
http://chott.seesaa.net/article/112799122.html
http://d.hatena.ne.jp/tipitu/20070618/p1
http://vladimir-kyoto.seesaa.net/article/13589460.html
賛否両論。否定的な意見の多くは、当たり前のことしか書いていないというモノ。確かに、本書で取り上げられている事例は、ちょっとアングラ経済に興味のある人にとっては常識的な内容ばかりだ。
しかし、本書の主眼はそこにはない。本書の主眼である税制に関する提案についてはポジティブな評価が多い。本書は読み方によって、評価が変わる本なのであろう。
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