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蛇足はあるが、あきらかなスゴ本:マイクロトレンド―世の中を動かす1%の人びと [社会]


マイクロトレンド―世の中を動かす1%の人びと

マイクロトレンド―世の中を動かす1%の人びと

  • 作者: マーク・J. ペン
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 2008/04
  • メディア: 単行本



スターバックスには数十種類のコーヒーが存在し、コンビニでは数千点の商品から好みのモノを選べる時代である現代において、10数年前のようにみんなが同じ選択肢を選ぶメガ・トレンドは生まれない。
しかし、多数の選択肢の中から、数は少ないが確実に同じ方向を指向している新しい流れは存在する。
それが、人口の1%程度のトレンドである、マイクロトレンドだ。
【目次】
第1部 男と女―Love,Sex,and Relationship
第2部 親と子―Family Life
第3部 仕事―Work Life
第4部 階層―Class
第5部 美と健康―Beauty and Health
第6部 飲食―Food,Drink,and Diet
第7部 情報と娯楽―Information and Leisure


作者と目次を見てもらえればわかるが、本書は米国で出版された原書の翻訳書であり、本書で取り上げられている事例は基本的に米国のモノである。

しかし、一つ一つの事例はしっかりとしたデータに裏付けされている上に、非常に面白い。
本書で取り上げられているマイクロトレンドの例は以下のようなものがある
「例1:男女比に泣く未婚女性」
出生時点では男51対女49の人口比だが、女性の同性愛者(レズビアン)より男性の同性愛者(ゲイ)の方が多いため、結婚適齢期には男47対女53になる。ティーンエイジャーの死亡率が高い黒人に限っていえば男44対女56になるらしい。
こうして、結婚適齢期には異性愛者では女性の方が余ってしまうのだ。

「例2:高齢の新米パパ」
医療の進歩によって可能となった不妊治療・高齢出産と、離婚後の再婚の増加によって40歳以上で初めての子供を授かる父親が増加している。人によっては50overで子供を授かる人も多く、リタイア後はゴルフではなく育児で時間をつぶすようになる。


こうしたマイクロトレンドがテーマ別に、しっかりとした統計で記されている。目の付け所が非常に良い上に、何故そうした現象が起きるのかという部分の考察もしっかりしているため、非常に納得できるし、楽しめる作品に仕上がっている。

マスコミが無理矢理作り上げる妙ちくりんなトレンド(ブロードキャスターのアレみたいなのとか)ではなく、本当のマイクロトレンドの力と存在感が本書には存在する。


と、ここまでは非常に良いのだが、本書には明らかな蛇足がある。
三浦展の描く日本のケースだ。
本書は、原書の翻訳部分の他に、当該マイクロトレンドが日本ではどうなのかと言う部分を三浦展が書いているのだが、これが非常に的外れ。
自分のヒット作「下流社会 新たな階層集団の出現」、「下流社会 第2章 なぜ男は女に“負けた」にかこつけて都合の良いデータを引っ張ってきているので説得力はないし、明らかにマイクロトレンドに合致しないケースが紹介されてしまっている。

勝間和代の「読書進化論~人はウェブで変わるのか。本はウェブに負けたのか~」でも、本書は非常に良い出来だが、日本語版は原書からくらべると事例が削られた上に余分なものが付け加えられている。と評されていたので英語で読むのが苦にならない人は原書に当たるのが良いだろう。


Microtrends: The Small Forces Behind Tomorrow's Big Changes

Microtrends: The Small Forces Behind Tomorrow's Big Changes

  • 作者: Mark J. Penn
  • 出版社/メーカー: Twelve
  • 発売日: 2007/09/05
  • メディア: ハードカバー



このように、明らかな蛇足はあるものの、絵に描かれた蛇の足と違って本書の余分な部分は読み飛ばせば何ら問題がない。
翻訳部分は間違いなく良書なので、値段だけの価値は絶対に存在する。

☆☆☆☆★(☆四つ半)


他のBlogの反応はこちら等。
(ポジティブな評価のエントリ)
http://plaza.rakuten.co.jp/sebook/diary/200902070006/
http://blog.livedoor.jp/jackofalltrades/archives/704108.html
http://hamidashirakuen.blog36.fc2.com/blog-entry-696.html
http://d.hatena.ne.jp/finalvent/20080513/1210676268
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2008/05/post_e0f2.html
http://ikadoku.blog76.fc2.com/blog-entry-294.html

このような明らかに面白い本に当たったとき、英語を実用的な早さで読めない自分に絶望します。
日本語でも十分面白いから損はしてないのですが……。







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