入門書としては良い出来だが……:よくわかる税法入門 第4版―税理士・春香のゼミナール [法律]
よくわかる税法入門 第4版―税理士・春香のゼミナール (有斐閣選書)
- 作者: 三木 義一
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2008/03/31
- メディア: 単行本
タイトルは「女子大生会計士の事件簿」あたりを意識ししてつけた軽い感じだが、法律書には定評のある有斐閣の出版だけあって、中身は骨のある。しっかりとした入門書になっている。
本書は入門書としては非常に良くできている。しかし、それが故に大学生には無条件で勧められないという問題点があるのだ。
【目次】
第1章 社長の報酬を自由に決められない?【租税法律主義】
第2章 脱税・租税回避・節税の違いは?【租税回避】
第3章 税法の体系
第4章 応能負担原則
第5章 課税最低限
第6章 課税の限界
第7章~14章 所得税法(1)~(8)
第15章~17章 法人税法(1)~(3)
第18章~20章 消費税法(1)~(3)
第21章~22章 相続税法(1)~(2)
第23章 酒税法
第24章 地方税制
第25章~26章 租税手続法(1)~(2)
第27章 租税処罰法
第28~29章 租税救済法(1)~(2)
第30章 税の使途
本書は総論から、実体法各論、手続法各論といかにも法律書といった本格的な構成をしていることからも分かるように、本格的な入門書である。
タイトルから想像するような軽い書物ではないが、入門書としてわかりやすくまとまっている。
しかし、本書を「良書」と言い切ってしまうのには若干抵抗がある。
その理由は、悲しいことながら法律書らしく、左翼的なものの見方に偏っているためだ。
例えば、第4章では、累進課税を「公平のためには当然」と説明するとともに、累進税率をもっと高めることを暗に主張している。
また、基礎控除が38万円しかないことを批判して、課税最低限の引き上げを主張する。
この考え方は明らかに偏っており、金持ちが貧乏人から搾取してるという、共産主義的なものの見方をベースにしているように見える。累進税率よりも、セーフティネットを張った上でのフラットタックスか人頭税の方が明らかに平等なはずだし、課税最低限の引き上げは税の負担をしない人を増やしてしまう。
筆者は、金持ちが貧乏人を搾取していることを信じ込んでいる割には、能力のある人から搾取して能力の無い人や努力しない人に所得を移転することには何の問題も感じていない。
「資本主義と自由」で描かれているような経済学者の考え方とは真っ向から対立している。
本書は法律の解説自体はわかりやすいし、入門書としては良くできている。
しかし、税法の解釈を通じて語られる世界観があまりに左翼的すぎるので、本書で学び始める大学生は要注意だ。併せて経済学の本を幅広く読み、偏ったものの見方に染まらないようにするべきである。
仮に弁護士や税理士を目指すにしても、左に偏った考え方は中和しておかないと、資格を取った後の営業に悪影響が出てしまうだろう。
☆☆☆★(☆三つ半)
参考:経済学上正しい税制を考える上でも、本書と併せて読んでほしい「資本主義と自由」のエントリはこちら
http://book-sk.blog.so-net.ne.jp/2009-02-07-1
他のBlogの反応はこちら等。
(ポジティブな評価のエントリ)
http://blog.goo.ne.jp/tukimane/e/c9ae9eca75ab03c980c9ac4462bd1ea0
http://lesailes.air-nifty.com/lifelog/2008/05/4_e2da.html
皆さん評価は高い。
確かに、法律の解説部分はよくわかるし、読みやすい。それだけに法律屋の問題点が浮き彫りになっているのだが……。
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