日本の舵取りに対する重大な提言:インテリジェンス 武器なき戦争 [社会]
インテリジェンスとは何かがよくわかる本。
スパイ小説、推理小説、歴史小説などで諜報機関の工作員についてはよく目にするが、そうした諜報機関の実際がよくわかる。
そして、佐藤優と手島龍一がこの国のインテリジェンスに対して、どういう思いと将来像を持っているかもよくわかる。
【目次】
序章 インテリジェンス・オフィサーの誕生(インテリジェンスは獣道にあり 情報のプロは「知っていた」と言わない ほか)
第1章 インテリジェンス大国の条件(イスラエルにおける佐藤ラスプーチン;外務省の禁じ手リーク発端となった「国策捜査」 ほか)
第2章 ニッポン・インテリジェンスその三大事件(TOKYOは魅惑のインテリジェンス都市;七通のモスクワ発緊急電 ほか)
第3章 日本は外交大国たりえるか(チェチェン紛争―ラスプーチン事件の発端;すたれゆく「官僚道」 ほか)
第4章 ニッポン・インテリジェンス大国への道(情報評価スタッフ―情報機関の要;イスラエルで生まれた「悪魔の弁護人」 ほか)
秘密情報の98%は公開情報を整理し直すことで読み解くことができる。
これが本書で描かれている諜報の真実だ。
諜報機関の職員が007ばりに他国に侵入して、秘密の情報を盗み出してくることなど無いのだ。
そして、インテリジェンスの力は国力すなわち経済力に比例する。そのため、日本のインテリジェンスは世界有数の実力を持つことができるはずなのだ。
しかし、本書で述べられている現実を見ると日本のインテリジェンスはかなりお粗末だ。
佐藤優が現実に起こった過去の事例を元に、日本のインテリジェンスを語っているのだが、一部の例外を除くとろくでもない状況としかいいようがない。
本書で取り上げられた、大韓航空爆破事件の例も日本の情報が米国に素通りしたとんでもない例だが、本書ではあほらしすぎて触れられてもいない、上海大使館の職員がハニートラップに引っかかって自殺した事件など、日本のインテリジェンスの現状は寒い。
日本が国力に見合ったインテリジェンス能力を身につけるための提言も併せて書かれており、国の政治に携わる人でなくとも、ビジネスマンなら本書は一読の価値がある。
ちなみに、私が公務員として勤務していた時代に、外国のスパイに引っかからないための研修(カウンター・インテリジェンス講習)を受けたことがあるが、本書の内容を読んだ方がよっぽど役に立っているような気がする。
☆☆☆☆★(☆四つ半)
基本的には良書だが、ちょっとお互い褒めあっているのが露骨に出ているのは読んでいて気分が良いものではないので、マイナス。それさえなければ最高なのだが……
他のBlogの反応はこちら等。
(ポジティブな評価のエントリ)
http://waruo.blog.so-net.ne.jp/2009-02-07
http://gunjoiro.at.webry.info/200902/article_1.html
http://eizo.admi.co.jp/archives/2009/01/post_515.html
http://mmaehara.blog56.fc2.com/blog-entry-1114.html
http://alcyone.seesaa.net/article/29404199.html
http://d.hatena.ne.jp/ogijun/20061216/p1
新書の割には骨があり、内容もまっとうな上に面白いので、皆さん評価が高い。
新書が粗製濫造される中、本書は自信を持ってお薦めできる内容だ。
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