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将棋がわかる人にとっては間違いなくスゴ本:イメージと読みの将棋観 [将棋]


イメージと読みの将棋観

イメージと読みの将棋観

  • 作者: 鈴木 宏彦
  • 出版社/メーカー: 日本将棋連盟
  • 発売日: 2008/10
  • メディア: 単行本



ヒカルの碁」で、歴代最強の囲碁棋士を挙げさせると多くの人が、江戸時代の棋士本因坊秀策を挙げるという台詞があった。
将棋ファンからすると結構違和感のある発言で、将棋で歴代最強の棋士を挙げると、羽生名人と大山十五世名人がTop2だろうし、升田、中原、谷川、森内、佐藤と言った戦後の棋士を合計すると、8割以上占めてもおかしくない。
じゃあ、江戸時代の将棋指しはどの程度の実力を持っていたのだろうか?
そうした疑問に答えてくれるのが本書である。

【目次】
第1章 序盤戦
 中原驚きの勝負術:中原-米長戦
 いきなり筋違い角で勝てるか
 阪田三吉端歩の謎:阪田-木村戦、阪田-花田戦
  他
幕間
 上達法あれこれ 他
第2章 中盤戦
 高野山の決戦:大山-升田戦
 大山-内藤の熱戦:大山-内藤戦
 ゴキ中超急戦の結論は?
  他
幕間
 封じ手 他
第3章 終盤戦
 鬼宗看の妙手:伊藤宗看-大橋宗眠
 ゴミハエ論争の名局:木村-升田戦
 最古の棋譜は現代にも通じる?:本因坊算砂-大橋宗桂戦
  他
谷川浩司十七世名人×羽生善治十九世名人座談会 21世紀の将棋を語る


本書の筆者は鈴木宏彦となっているが、本書は、筆者がプロのトップ棋士にテーマ図を見せて、その読みを披露して貰う形式。つまり、実質的に本書の内容を語っているのは、現在の将棋界のトッププロである。
回答者は、羽生善治名人、谷川浩司九段(十七世名人)、渡辺明竜王、佐藤康光棋王、森内俊之九段(十八世名人)、藤井猛九段。そうそうたるメンバーである。

目次を見て興味をそそられる対局があった人や、上記の回答者のすごさがわかる人は本書を間違いなく楽しむ資格がある。プロの将棋を楽しめる人ならレベルにかかわらず、本書を楽しむことができるのだ。

私は弱い将棋ファンだが、本書は非常に楽しめた。
江戸時代の棋士はどの程度の力を持っていたのか。阪田三吉は本当に名人にふさわしい実力を持っていたのか。大山・升田の時代から現在の将棋界はどの程度進歩しているのか。
本書を通じてこのような疑問がだんだんと晴れてくる。

結論としては、昔の棋士も現代のトッププロと遜色ないぐらいの実力を持っている。
研究の集積が進んでいないため、序盤の形は洗練されていない。それでも読みの深さ・正確さは現代と劣ることがないと言うところだろう。

囲碁と違って将棋では昔の棋譜が脚光を浴びない理由は、序盤の形が違いすぎて、純粋な戦術指南としては役に立たないためだろう。
しかし、戦術指南としては役に立たないが、芸術としては十分に価値があることが本書を読むとわかる。


現代にピラミッドを造ることはできない。アレはどんなに無駄遣いしても揺るぎない王権と、人の命が極端に安い時代だからできたものだ。逆に、本州と四国に橋を架ける様な工事は現代でしかなしえない。
このように、古代には古代の良さ、現代には現代の良さがあるのだ。

将棋も同じ。
制限時間もなく、御城将棋という形式・実質ともに共通認識として持ちうる最高の一戦が用意されていた江戸時代の棋譜は、その環境でしか出せない素晴らしい味を持っている。

このように、本書はプロ将棋を楽しめる人なら絶対に読んでほしい、将棋のスゴ本である。
ちなみに、棋力のある人は、トッププロの読みから学ぶこともできるのかもしれない。このあたりは私にはわからない世界だが……。

☆☆☆☆★(☆四つ半)

他のBlogの反応はこちら等
(ポジティブな評価のエントリ)
http://kame2house.blog96.fc2.com/blog-entry-1596.html
http://d.hatena.ne.jp/tomisima/20090217/1234891289
http://haruo-suzuki.sblo.jp/article/25684677.html
http://blog.livedoor.jp/yunabook/archives/50433541.html
http://d.hatena.ne.jp/sangencyaya/20081016/1224149852
http://d.hatena.ne.jp/doublecrown/20081109/1226244992

将棋ファンというニッチを狙ったその狙いはばっちりで、皆さん評価が高い。
ただ、本書は将棋専門誌「将棋世界」に過去連載されていたものらしい。
そういう意味では、コアなファンは何を今更という感じだったのかなぁ。






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