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超大国が消えた世界で、わが祖国はどう振舞うのか:アメリカ後の世界 [社会]


アメリカ後の世界

アメリカ後の世界

  • 作者: ファリード・ザカリア
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2008/12/17
  • メディア: 単行本



インド人のジャーナリストが書いた本書。
ジャーナリストといっても、主に米国で活躍する筆者はきちんと博士号も持っており、日本のテレビジャーナリストのような薄っぺらい読みではなく、一定程度の学問的バックも持ったきちんとした論を展開している。
今後の世界情勢を考える上での非常に有益な材料たりうる一冊である。

【目次】
第1章 「アメリカ以外のすべての国」の台頭
第2章 地球規模の権力シフトが始まった
第3章 「非西洋」と「西洋」が混じり合う新しい世界
第4章 中国は“非対称的な超大国”の道をゆく
第5章 民主主義という宿命を背負うインド
第6章 アメリカはこのまま没落するのか
第7章 アメリカは自らをグローバル化できるか


 本書の基本的な世界観は、現在世界で唯一の超大国であるアメリカ合衆国が大きな転換点に差し掛かっており、今後は「超大国」が消えて、世界は複数の「大国」が乱立する様相を呈するであろうという見方である。
 アメリカの努力でうまくフェードアウトできるのか、現在持っている優位がすべて消し飛んでしまうのかは異なるが、唯一の超大国としての地位を維持することは難しいというのが筆者の考える将来の世界である。

 筆者はさまざまな点から、米国がもはや「超大国」でありえない理由をはっきりと述べるのだが、その一つ一つに説得力がある。筆者が言うように、今後の米国は、世界から嫌われることなく、老成した元・超大国としての地位を確保していくのが重要となっていくだろう。
 
 
 上記の基本的な世界観に加えて、新たに台頭してくる「大国」の代表が中国とインド。
 筆者はこの二カ国についても多くの紙面を割いて解説している。本書を読むと、この両者は将来性触れる同じアジアの大国で、並び証されることも多いが、実態はまったく異なることがよくわかるのだ。
 主な違いは、政治体制と人口構成。
 政治体制については、中国はご存知のとおり共産党独裁で、インドは世界最大の民主主義国家である。ここまではよく言われることだが、筆者はステレオタイプに独裁は悪だと断ずることはない。
 筆者いわく、中国は独裁であるため、効率的な経済発展が可能であり、その効率性に勝てる国は存在しない。逆にインドは民主主義であるがゆえに、選挙時の利益誘導があったり、開発地区の住民を非人権的な手段で立ち退かせたりはできないのでどうしても効率が落ちる。政治体制も一長一短なのだ。
 人口問題についても、中国は人口抑制策に成功してしまったために将来の少子化が確実となり、インドは人口抑制策が大失敗に終わったために、少子化とは縁遠い状態でいることができる、と総合的なものの見方をしている。

 このように、筆者が描くアメリカ・中国・インド・欧州・ロシアといった「大国」が乱立する近未来は十分に説得的であり、今後の世界を考える上での一助となりうる。
 イデオロギー的な偏りも少ないので、安心して読める、内容の深い良書である。

 最後に、今後の世界でわが日本はどうなるのか?
 私は、筆者が米国が衰退していく(あるいは衰退している)根拠として示す事実の半分以上は日本にも当てはまるように思えてならなかった。日本も確実に衰退しているのであろう。
 「超大国」が消えて、「大国」が乱立する世界で、全盛期の力をなくした「大国」日本はどのような外交的・経済的政策をとるのか?その答えは書かれていないが、本書を読んだ人はいやでもその答えをじっくり考えることになるだろう。そうした点でも、いろいろな人に読んでほしい本である。

☆☆☆☆(☆四つ)

他のBlogの反応はこちら等。
(ポジティブな評価のエントリ)
http://www.fujine.org/archives/50843474.html
http://okc.txt-nifty.com/okc_/2009/05/post-83d5.html
http://fsmism.exblog.jp/10887666/
http://blogs.yahoo.co.jp/hiromichit1013/59300303.html
http://blog.goo.ne.jp/onscreen/e/f2d24ea1a193508149ee462340bceb10
http://bestbook.livedoor.biz/archives/50704059.html

意外とマネー系のBlogでの言及が多いことにびっくり。
確かに本書を読むと、今後の投資では新興国の存在を良くも悪くも無視できないことは明確になります。







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