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意外と知らない有名小説:西遊記 [小説]


西遊記(上) (光文社文庫)

西遊記(上) (光文社文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2003/10/10
  • メディア: 文庫



西遊記(下) (光文社文庫)

西遊記(下) (光文社文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2003/10/10
  • メディア: 文庫



西遊記。三蔵法師、孫悟空、猪八戒、沙悟浄が活躍するこの物語を知らない人はいないと思う。
しかし、この物語を通して読んだ人もほとんどいないのではないだろうか?
有名な小説だが、全文を読んだことがある人が少ないのには訳がある。

西遊記の構成は大きく以下の通りに分かれる。
1.孫悟空の誕生から、天界で大暴れして封印されるまでの物語
2.三蔵法師の誕生から、天竺に向けた旅が開始されるまでの物語
3.三蔵法師一行が天竺に向けて旅をする物語

このうち、1.は知っている人が多いだろう。
石から生まれた孫悟空が法力を身につけ、天上で大暴れするストーリーである。
一番有名なのは、大暴れした孫悟空をお釈迦様がたしなめるシーンで、お釈迦様から逃れて地の果てまで飛んでいったはずの孫悟空が実はお釈迦様の掌から出ておらず、孫悟空が地の果てだと思って署名した柱はお釈迦様の指だったというシーンだ。
絵本などで有名だし、日本人の多くがこの下りを知っているだろう。
そして、西遊記でもっとも面白いのはこのパートなのだ。

次に、2.についてだが、このパートはかなりマイナー。
三蔵法師が金蝉子の生まれ変わりとして生まれ、父母に起こった不幸な出来事により寺に預けられて育ち、立派な坊主になる話や、唐の太宗皇帝の忠臣が夢で竜を切ったことによって三蔵法師がインドに旅立つことになる話を聞いたことがある人は少数であろう。もちろん私もこの本を読むまでは知らなかった。
三蔵法師の出生については子供向け絵本にしにくい内容(役人の妻が山賊にレイプされて生まれたのが後の三蔵法師)なので、知る機会が少ないのであろう。

最後に3.は一部は知られている。
三蔵法師が封印されていた孫悟空の封印を解いて旅立つシーンなどは有名であろう。
しかし、このパートについても、猪八戒・沙悟浄が仲間になるシーンや、金角・銀角以外の妖怪や、火焔山以外の障害を思いつく人は少ないのではないだろうか?
実はこのパートは異常に長いので、一般に語られるに当たってははしょられることが多い。本書でも、筆者が一部のシーンを省略しており、全部が収録されているわけではない。

しかも、このインドへの旅は物語の中心でありながら、ストーリー自体は実に退屈だ。
基本パターンは三蔵法師のわがままから妖怪にだまされ、孫悟空が助けようとするものの歯が立たず、観音様・お釈迦様と言った天上界の力を借りて三蔵法師を取り戻すというパターン。
ほとんどがこのパターンの繰り返しで、現代の連載小説・漫画だったら速攻で打ち切られるのが確実なほどのワンパターンなのだ。
西遊記には「西遊記 上―完訳 (現代教養文庫 921)」のような完訳モノもあるが、完訳だとかなり退屈だと思われる。

研究として読むならともかく、私のように楽しみとして読むには、本書のように意訳され、まとめられたモノの方がオススメだ。検索したところ、平岩弓枝も「西遊記」を書いているので、西遊記を読みたい人はそういったモノの方が楽しめるだろう。


内容についてだが、ストーリーは退屈ながらキャラクターについては、本場の伝奇モノの名にふさわしく、ぶっ飛んだ妖怪がたくさん出てきており、個々のシーンにおける楽しみは十分味わえる。
中国からインドにお経を取りに行くというマッチョな実績を残した三蔵法師(玄奘)を、泣き言を多発し、嫉妬深く、思いつきで行動し、疑り深いなよなよした人物として描いた筆者の意図はよくわからないが、ワンシーンだけを切り取ってみると十分なクオリティを保っている。

大人でも知らない人が多い西遊記。
金角・銀角以外の妖怪が浮かばない人は、全体を見通す意味で意訳された西遊記を読んでみてほしい。ストーリーはワンパターンだが、キャラクターは良い味を出している。
また、火焔山の妖怪を牛魔王だと思っていた人。あなたは大ヒットコミック「ドラゴンボール」に毒されています。是非本物の西遊記を手に取ってみてください。

☆☆☆★(☆三つ半)

余談だが、日本のドラマで三蔵法師を女優(夏目雅子、深津絵里等)が演じたことについて、中国から抗議の声が上がったというニュースを見た記憶がある。
それが本当なら、きっと中国でも西遊記の全文はあまり読まれていないのだろう。
全文を読んだことがある人なら、西遊記の三蔵法師は女性の方がピッタリ来ることに賛成してもらえるだろう。
(念のため断っておきますが、性別に基づく差別の意図はありません)

他のBlogの反応はこちら等。
http://toukowakasa.hontsuna.net/article/1933935.html
http://blog.livedoor.jp/mutsumi4560/archives/51099204.html
http://yaplog.jp/unyamunya/archive/523
http://blog.goo.ne.jp/ishinomakoto200/e/1cd532f74449ccd69bdf2f1cbedd0263

何人かの人が触れているように、本書ではカットされた部分も多く、完全ではない。
これをどう取るかは人それぞれのようだが、私は物語としての体裁を整え、エンタテイメントとして成立させるには必要な措置であり、十分に面白いと思っている。







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コメント 2

若桜浅葱

はじめまして。トラックバックありがとうございます。
Book-Skさんと違い、うちは紹介というのもおこがましい本読みサイトで、うれしいやら、恥ずかしいやらですが。
これからも、ときどき寄らせていただきますね。



by 若桜浅葱 (2009-06-16 20:33) 

book-sk

>若桜浅葱 さん
ご丁寧にコメントありがとうございます。

私は他人の読書感想を読むのが好きなので寄らせていただきました。
また見に来てくださいね。
by book-sk (2009-06-16 23:32) 

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