正義の怒りがわいてくる:孫は祖父より1億円損をする 世代会計が示す格差・日本 [社会]
孫は祖父より1億円損をする 世代会計が示す格差・日本 (朝日新書)
- 作者: 島澤 諭
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2009/04/10
- メディア: 新書
本書は世代会計について解説した本。
至極まっとうな結論が書かれているが故に、現実とのギャップがひどすぎて怒りがわいてくる。
【目次】
第1章 「世代会計」で解けるさまざまな問題
第2章 「世代会計」って何だ!
第3章 「世代会計」で見る世代間格差
第4章 老人の、老人による、老人のための政治
第5章 世代間の公平性を確保するために
第6章 「世代会計」と時間、「世代会計」と政府投資
本書は世代会計の考え方に基づき、現在の社会制度が続いた場合、何歳の世代がいくら貰い、いくら支払うかを明確に提示してくれている。
詳細な計算式や根拠、数値は本書を見て貰えるといいのだが、大雑把な結論からすると65歳の人は今後国から約1,400万円貰うことが出来る。
逆に、現在20歳の人は今後国に差し引き2,500万円支払わなくてはいけない。
この数字からも現在の日本がいかにゆがんだ社会設計をしているか、いかに老人を優遇しているかがハッキリとわかる。
さらに衝撃的な事実は、まだ生まれてきていない世代は約1億2,000万を支払わなくては成らないのだ。
早い話が今の日本の社会設計は破綻しているのである。
筆者は、社会制度を変えるかどうかを議論する段階はとっくに過ぎ去っており、どのようにして老人の搾取から若者を守るかを検討し、速やかに実行すべき段階に来ていると主張する。
本書の主張は全く持って正しく、ここ何年かのうちに社会制度を変革できなければ、急激なインフレ等のハードランディングによって解決するしか無くなるのであろう。
現実には日本市場もっとも強欲で利己的な団塊の世代が頑張っている以上、なかなか簡単に制度を変えることはできない。しかし、何とかしないと日本の制度は破綻する。
私は、筆者が言うような社会制度の変革は団塊の世代が絶対に許さないし、実現不可能だと考えている。
それでも、何とかしなければいけないことだけは重たい事実である。
本書を読むと怒りしかわいてこない。読後感は最悪だ。
しかし、一人でも多くの人に本書を読んで貰い、怒りを共有してほしい。
それが日本を救える唯一の道なのだから。
☆☆☆☆★(☆四つ半)
本書はごらんのように朝日新書であり、朝日新聞社が出版元である。
本書では政治の問題点は山のように挙げられていて、後期高齢者制度に反対した老人を強欲であるとハッキリ言いきっている。しかし、後期高齢者制度の問題で老人を煽ったマスコミの問題点は何も指摘していない。
朝日新聞がきちんと本書の問題点を認識していれば、世代間不平等解消に向けた動きは進むはずなのに、むしろ新聞本紙では世代間格差を拡大するような論調を取っている。
これだけの本を出すことが出来るのだったら、朝日新聞は団塊の世代に利己的な態度をやめるように薦めるべきだと思うのだが……。そんなことお構いなしなのが、朝日クオリティなのだろう
他のBlogの反応はこちら等。
(ポジティブな評価のエントリ)
http://acertainlight.blog.so-net.ne.jp/2009-05-20-2
http://d.hatena.ne.jp/yocchi/20090417/p1
意外とエントリが少ない。
本を買う人は老人が多いのだろうか?
本書で指摘される世代間の格差を埋めていかないと、日本国全体がGMのようにレガシーコストで倒れてしまう危険性があるのだが……。
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