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ヴェネチア共和国を通じて考える我が国の姿:海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年 [小説]


海の都の物語〈1〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)

海の都の物語〈1〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)

  • 作者: 塩野 七生
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/05/28
  • メディア: 文庫



海の都の物語〈2〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)

海の都の物語〈2〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)

  • 作者: 塩野 七生
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/05/28
  • メディア: 文庫



海の都の物語〈3〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)

海の都の物語〈3〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)

  • 作者: 塩野 七生
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/05/28
  • メディア: 文庫



海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年〈4〉 (新潮文庫)

海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年〈4〉 (新潮文庫)

  • 作者: 塩野 七生
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/06/27
  • メディア: 文庫



海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年〈5〉 (新潮文庫)

海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年〈5〉 (新潮文庫)

  • 作者: 塩野 七生
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/06/27
  • メディア: 文庫



海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年〈6〉 (新潮文庫)

海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年〈6〉 (新潮文庫)

  • 作者: 塩野 七生
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/06/27
  • メディア: 文庫



塩野七生が描くヴェネチア共和国の建国から滅亡までの物語。
ヴェネチア共和国建国時(西暦452年)の日本は古墳時代。ナポレオンによって併合されたヴェネチア共和国滅亡時(西暦1797年)の日本は江戸時代後期。すごくスケールの大きな物語である。

なお、私が読んだのは中公文庫版だが、絶版のようなので一番新しい新潮文庫版の画像を張っておく。
中公文庫版は上下だったのだが、新潮の新刊だと6分冊。ローマ人商法(笑)炸裂である。
【目次】
第1話 ヴェネツィア誕生
第2話 海へ!
第3話 第四次十字軍
第5話 政治の技術
第6話 ライヴァル、ジェノヴァ
第7話 ヴェネツィアの女
第8話 宿敵トルコ
第9話 聖地巡礼パック旅行
第10話 大航海時代の挑戦
第11話 二大帝国の谷間で
第12話 地中海最後の砦
第13話 ヴィヴァルディの世紀
第14話 ヴェネツィアの死


本書で描かれているヴェネチア共和国の歴史を大きく分けると、3つに分けられる。
一つ目は、交易を重視した海洋国家として、地中海の覇権を握り、国力の頂点を極めるまでのパート。
二つ目は、君主国家の台頭に押されて、海の覇権を失い、交易から、工業・農業へと経済力の基盤を移しながらも、存在感を保っている元大国としてのパート。
最後は、国力は絶頂期とは比べものにならないものの、芸術等のソフトパワーに存在感がある滅亡前のパート。

それぞれの段階において、ヴェネチア共和国の住民は最善の努力をし、国力を最大限有効に活用しようとしている。筆者が入れ込むだけ有って、その努力・その工夫には感心させられる。
それぞれの時代時代によって、感心するポイントは微妙に異なるが、合理的でありながらも生き生きとしたヴェネチア共和国のあらゆる時代を体験出来るのが本書のすごみである。


ヴェネチア共和国自体は、契約を重視し、異教徒を含んだ異質な人々との交流も躊躇せず、少ない人口で有りながらも一生を外国で終える人も多い、といったように海洋国家であるという点を除いては、我が国とは似ても似つかない国のあり方を示している。
しかし、本書を読むと、ヴェネチア共和国を通じて我が国のあり方に思いをはせずにはいられない。
司馬遼太郎とは違った形でこの国のあり方を痛感するのが、筆者の持ち味であり、人気の秘訣なのだろう。

筆者の歴史観に対して、弱者切り捨てというイメージを抱かない人にならオススメできる良書である。
正直言うと、筆者の代表作である「ローマ人の物語」と比較して、あこがれを抱きながらも落ち着いたトーンで書かれていることがわかるため、私は本書の方がオススメである。

☆☆☆☆(☆四つ)

余談になるが、中公文庫版上巻の解説を京都大学教授で国際政治学者の故高坂正堯教授が書いている。
解説文としては良くできていて、これだけで一読の価値がある。
新潮文庫版は誰が解説を書いているかは知らないが、中公文庫版を読む人は解説まで読んでみてほしい。

他のBlogの反応はこちら等。
(ポジティブな評価のエントリ)
http://stockkabusiki.blog90.fc2.com/blog-entry-853.html
http://koyak.blog17.fc2.com/blog-entry-301.html
http://suguri-bingo.jugem.jp/?eid=340
http://ftopapa.blog.ocn.ne.jp/dokusyo/2009/07/1_c9c5.html
http://ameblo.jp/zatsudoku/entry-10294662810.html

皆さん高評価。そして、本書を通じて日本について考えたり、言及する人の多いこと……。
やっぱり日本と比較して感じずにはいられない作りになっているところに、筆者の我が国への愛を感じます。
「ローマ人の物語」でカエサルやハンニバルを絶賛しながら、ヴェネチア共和国を滅ぼすナポレオンをあまりよく書いていないあたりの、筆者の好み・美意識は若干ついて行けないところがありますが。







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