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正社員も崖っぷち:エンドレス・ワーカーズ―働きすぎ日本人の実像 [社会]


エンドレス・ワーカーズ―働きすぎ日本人の実像

エンドレス・ワーカーズ―働きすぎ日本人の実像

  • 作者: 小倉 一哉
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2007/11
  • メディア: 単行本



ワーキングプア問題で、非正規雇用の労働者の生活が苦しいことはよく知られており、今度の衆議院総選挙に当たっても非正規雇用労働者の保護をテーマに挙げる政党も多い。
しかし、正規雇用の正社員だって、決して余裕があるわけではない
本書を読めば、正規雇用・非正規雇用を問わず日本の労働者が限界ぎりぎりにあることがよくわかる。

【目次】
第1章 日本の労働時間はどうなっているか
第2章 長時間労働の実態
第3章 なぜ残業をするのか
第4章 長時間労働の心身への影響
第5章 労働時間管理が緩やかな人々
第6章 正社員ではない人々の問題
第7章 有給休暇の問題
第8章 長時間労働の解消のために


労働政策研究・研修機構で主任研究員を務める筆者が、豊富なデータを元に日本の労働環境について述べた本書。
本書の特徴の一つは、データが豊富であると言うことである。
独立行政法人である労働政策研究・研修機構が実施した調査をベースに書いており、タダの印象だけで書かれた本とは一線を画している。

本書を読むと、感覚ではわかっている人が多い、日本の労働環境が劣悪であるという事実が明確に突きつけられる。

非正規雇用が増えたため、平均値では欧州諸国に近づいているように見えるが、実体は韓国に近い長時間労働を強いられる労働者。
長時間労働が労働者の心身を文字通り蝕んでいるという事実。
ほとんど消化されない・消化することの出来ない有給休暇。
そして、それら事実にかかわらずなんの役にも立っていない労働基準監督署と、労働関係の法律。

厚生労働省は年金・医療を中心に「厚生」の部分で叩かれることが多いが、「労働」の部分もひどいことがよくわかる。
そんなひどい状況にもかかわらず、誰も、何も言わないのは、「昔はもっとひどかった」とか「派遣労働者よりはまし」とか「仕事を責任持ってやるのは当然」等の日本人特有のみんなで不幸になろうと言うメンタリティが発揮されているからに他ならない。

本書を読むと労働に希望を持てなくなるので、学生にはお勧めできない部分がある。
しかし、事実を直視して、日本の労働環境を変えるべきだと思えるので、社会人なら一読の価値は確実に存在している。

長時間労働・うつ病・職場環境の悪化等の問題は今やどこの職場でも見られると思う。
本書の内容は人ごとでは無いはずだ。

☆☆☆★(☆三つ半)

他のBlogの反応はこちら等。
(ポジティブな評価のエントリ)
http://ohtake.cocolog-nifty.com/ohtake/2007/11/post_a797.html
http://blog.goo.ne.jp/shomin-law/e/04a374485008471b28749f9956a99755
http://d.hatena.ne.jp/arn/20071201
(微妙な評価のエントリ)
http://blog.goo.ne.jp/rainygreen/e/67d3fe4a645950e0b212fea07eace447

本書のデータの部分は素晴らしい。
提言部分は、サマータイムを肯定するような根拠の薄い思い込みや、深夜営業の制限等の労働系論者にありがちな左よりの部分も見られるので若干賛同できない部分も多い。
それでも、労働問題を理解する基本に読むべき一冊であると思う。





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