日本とは事情の違うワーキングプア:ワーキング・プア―アメリカの下層社会 [社会]
アメリカのワーキングプア事情を語った本書。
同じワーキングプアでも日本との違いがよくわかる。
日本との主な違いは
1.階層社会(貧しい家庭ではろくに教育も受けられない)
2.合法的に搾取される移民という存在
3.好景気(本書が出版された2004年前後は基本的に米国は好景気)の下でのワープア
4.貧弱な社会保障。特に医療保障。
5.ドラッグの蔓延
と言ったところだろうか。
【目次】
貧困の淵に立って
お金とその対極
働いてもうまくいかない
第三世界を輸入する
恥辱の収穫
やる気をくじく職場
父親たちの罪
家族の結びつき
体と心
夢
〔ほか〕
本書は米国のワーキングプアについて、それぞれの事例・問題をレポートしたものである。
統計やデータは出てこず、ひたすら個別の事例が続いて、それによって米国のワーキングプアを理解できる作りになっている。
そして、事例は400ページ近い分量で、かつ、二段組みと言うことからも分かるように、圧倒的なボリュームを持っている。
個々の事例については、自己責任だと避難したくなる事例も多い。特にドラッグにはまってワーキングプアになるような事例は日本人の私の感覚ではあまり同情できない。
他方、階級社会や移民による賃金低下圧力を受けている点では日本以上に厳しい環境にあり、非常に身につまされる。自分が米国に生まれていたら、ワーキングプアになっている確率は低くないと思えるのだ。
このように、本書からは、米国のワーキングプアの実体がこれでもかと言うぐらいににじみ出ている。
日本の現状などよりはるかにひどい米国の実体がよくわかる一冊である。
☆☆☆(☆三つ)
本書と併せてこれを読めば、米国のすさんだワーキングプアの状況がよくわかります。
こっちは、ルポライターが体験取材した本なので若干上から目線ですが……。
タグ:☆☆☆ デイヴィッド・K・シプラー
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