ミステリとホラーの絶妙な融合:シャドウ [小説]
サスペンス仕立てのミステリ小説。
ホラー風味のミステリは多いが、タダ怖いだけではなく、ミステリを引き立てる絶妙のバランスで成り立っているものは少ない。
そして、本書は、その数少ない良作の一つと言っても過言ではない。
あらすじはミステリの面白さを損なわないために割愛。
冒頭ではただ”ホラー”と書いたが、本書は妖怪やゾンビと言った非日常の怖さではなく、日常に潜む狂人の怖さを描いた”ホラー”である。
どちらを好むか、どちらを怖いと感じるかは人それぞれだと思うが、現実離れした怖さを感じる感覚が欠如している私からすると、本書の様な人間の怖さを描く小説の方が怖い。そして、それが故に楽しめるのだ。
また、ミステリとしても本書は良くできていて、一段落読む毎に違った人が犯人に見えてくる。
登場人物がそれぞれの立場で、自分の持っている情報から犯人を考え、手持ちの情報が非対称・不完全な故に、違った人が怪しく見える。
そんな複雑な状況をうまくかき分けているのがまたすごい。
ミステリとしての面に限定すると、貫井徳郎の「プリズム」や、桐野夏生の「柔らかな頬」なんかとよく似た読後感だ。
読書前に感じていた、ミステリ欠乏感を不足を十分に補うことの出来た名作。
ホラー風味の作品に嫌悪感を感じない人になら、自信を持ってオススメできる作品である。
☆☆☆☆(☆四つ)
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やっぱり高評価。
筆者の本は初めてだが、他の本も追いかけてみようと思わせる力にあふれている。
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