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フランチャイズ参加は起業ではない:セブンイレブンの罠 [社会]


セブンイレブンの罠

セブンイレブンの罠

  • 作者: 渡辺 仁
  • 出版社/メーカー: 金曜日
  • 発売日: 2009/10/09
  • メディア: 単行本



Q.セブンイレブンは誰から儲けているのでしょうか?
A.フランチャイズオーナーからです。お客さんは関係ありません。

これが筆者の主張だ。


本書は、セブンイレブンのフランチャイズ経営に失敗したオーナーへの取材を中心とした、セブンイレブンの告発本。
一国一城の主を夢見てフランチャイズに参加した人の、影の面をこれでもかと言うぐらい味わうことが出来る。
【目次】
プロローグ 秘密主義のカリスマ経営者
第1章 佐久間オーナーは、なぜ、死んだのか?
第2章 セブン-イレブン大儲けの裏側
第3章 「オーナー偽装」という罠
第4章 「オープンアカウント」の闇
第5章 フランチャイズ契約書の秘密
第6章 鈴木会長“直属部隊”が売上金を奪いにやって来た!
第7章 「契約破り」を恐れ、三億円の繁盛店を打ち壊した
エピローグ 伊藤雅俊イトーヨーカ堂名誉会長への手紙


本書は、セブンイレブンを告発する目的で書かれており、主な情報源はセブンイレブンを営んでいたが経営がうまくいかず、フランチャイズを離脱したり、セブンイレブンに対して訴訟を行ったりしているオーナーである。
そのため、セブンイレブン側の主張は一切触れられていないので、偏りがあることは否めない。

それでも、セブンイレブンをはじめとするコンビニフランチャイズにおいて、どんな面が問題になっているかはよくわかる。

本書がセブンイレブンのえげつない面として指摘しているのは主に以下の3点だ。
●オープンアカウント
オーナーは契約書上は独立した事業者であるにもかかわらず、セブンイレブンはオーナーに対して仕入れ原価等は一切開示せず、証拠書類も交付しない。
売り上げは全てセブンイレブン本部に送金させ、店のオーナーには徹底して情報を渡さない。
”オープンアカウント”という名称はほとんどブラックジョークであり、オーナーは自分の店についての情報を満足に得ることすら出来ないのだ。

●ロスチャージ
コンビニはその業態上、賞味期限切れの廃棄や万引き被害はどうしても発生する。
ところが、一般の小売業だと原価として計算されるそれらにも、チャージ(ロイヤリティ料金)が科されてしまうのである。
最近裁判になっていたのでご存じの方も多いと思うが、セブンイレブンが値引き販売を認めないのもそこに原因があるのだ。100円の商品を半額で売ると50円の××%(割合は契約によって異なるが、最大は7割近くなる高額)しかセブンイレブンは儲からないが、賞味期限切れで廃棄になると100円全額の××%が儲けになるのだ。

●ドミナント
本書が指摘する最大の問題がこれ。
セブンイレブンが1日80万円近く売り上げると、本部は近くに別のセブンイレブンを開店するのだ。
その結果、オーナーは借金漬けになり、その金を貸す本部はさらに儲かることになる――。
本書によると、このドミナントのせいで、1度フランチャイズに加入すると、セブンイレブン本部の奴隷となるしか無くなってしまうのである。

そのほかにも、24時間営業の強制や、フランチャイズ加入時に保有資産を全て申告させ、どの程度の借金に耐えられるかを調べておく手法などいろいろな問題点も指摘されている。


これらに対する反論としては、独立事業者として契約書にサインした以上、契約は守らなくてはならないとする反論が考えられる。
筆者は、この反論に対しては、昨日までサラリーマンだった脱サラの人にそんなことを理解しろという法が無理だと再反論するのだが、この部分はどちらが正しいか人によって感じるところが異なるであろう。


このように、筆者の主張にはハッとさせられる反面、偏りを感じるところもあるのが率直な感想である。
しかし、本書はコンビニオーナーが陥る地獄はよく反映している。
そして何より、フランチャイズという形態では真のオーナーになれないことがよくわかる。自分で全てのリスクを取って一から起業するのと違って、本部に行動は縛られるし、成功したときに得られる利益も限定される。

この、フランチャイズは起業と違うという事実は覚えておいて損はない。
コンビニオーナーをやってみたいと思う人はもちろん、コンビニユーザーにも読んでもらいたい一冊である。

セブンイレブンの大躍進を支えた企業リストラ組が少なくなる一方、次のターゲットに親に死なれた元ニート・引きこもりあたりが選ばれる可能性があるので、そういった人は本書を読んで注意してください。

☆☆☆☆(☆四つ)

他のBlogの反応はこちら
(本書をポジティブに評価するエントリ)
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20091220/1261285986
http://shinka3.exblog.jp/13284417/
http://blogcq.livedoor.biz/archives/50900267.html
http://wakubuku.seesaa.net/article/136992031.html
http://zarutoro.livedoor.biz/archives/51287855.html
(微妙な評価をするエントリ)
http://d.hatena.ne.jp/enokitech/20100312/1268405057
http://d.hatena.ne.jp/ysadaharu/20091210/1260454762

本書の評価はいろいろでも、本書を読んで感じるセブンイレブン商法に対する怒りと恐怖は共通。
うまい話には必ず裏があります……。

ただ、セブンイレブンの名誉のためにちょこっと弁解しておくと、本書で出てくるセブンイレブンを離脱したオーナーが始めたオーナーに優しいフランチャイズがあるのだが、コンビニ店舗としての魅力はセブンイレブンの方が上だと思います。だからといって自分がオーナーになるのは絶対に嫌ですが(笑)





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