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若者のあこがれは老人には理解されない:なぜ若者は保守化するのか-反転する現実と願望 [社会]


なぜ若者は保守化するのか-反転する現実と願望

なぜ若者は保守化するのか-反転する現実と願望

  • 作者: 山田 昌弘
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2009/11/20
  • メディア: 単行本



2005年から2009年までの雑誌の連載を書籍化したのが本書。
2~3ページ毎に1テーマが論じられており、その時々の空気・世論を踏まえた上で筆者の持論が展開されており、非常に味わい深い。

【目次】
●消費もできなくなった若者の不安 -現代人のアイデンティティはどこに?
●若者の希望を潰す新卒偏重の採用 -いつまで不合理な慣習を続けるのか
●高学歴フリーター対策を考える -「教育の過剰」が生みだす弊害
●希望の過剰がうつを引き起こす -ダーウィンで読み解く日本社会
●若者は結婚をしたいと望んでいる -少子化を防ぐには「婚活」支援が必要
●専業主婦志向の復活が意味するもの -「女-女」格差の出現という難題
●恋愛の「格差問題」その過酷な現実 -「もてない男」はなぜ生まれるか
●日本でも現実味帯びる「社会の分断」-「ベルばら」が暗示する格差拡大の行く末


本書のテーマは上記の目次にもあるように、新卒偏重採用への反論や、高学歴フリーター問題、筆者お得意の恋愛格差など幅広い。
内容も、若干データが荒っぽいなどの問題はあるにせよ、世間の思い込みよりははるかにましで、それぞれ考えさせられる作りにまとまっている。

本書のタイトルで、「なぜ若者は保守化するのか?」となっているが、このタイトルは筆者流の釣り。
若者は決して保守化しているわけではないのだ。
では、保守化ではないのなら、若者が大企業志向になり、専業主婦志向になるのは何故か?

答えは簡単。
いつの時代でも若者は手の届きにくいものにあこがれているだけなのだ。

バブルの時代までは、男は大学を出るとそこそこの企業に正社員として就職できるのが普通だったし、女は腰掛け就職の後に正社員の男と結婚できるのが普通だった。逆に、正社員・公務員として就職せずに、自分の時間を多く持った就業形態で働くことは非常に稀であり、難易度が高かった。
それが故に、当時の若者はフリーターにあこがれ、夢を追う非正規雇用にあこがれていたのだ。

ところが、バブル崩壊から失われた十年(十五年)を経た現在では事情が変わってしまった。
大学を出たと言うだけでは正社員になるのは難しいし、公務員の試験も高倍率。男性が正社員の職に就きにくくなったため、女性も必然的に正社員の妻となり、専業主婦になるのは難しくなった。
逆に、フリーター・派遣社員はありふれたものとなり、就職できなかった人はとりあえず派遣・フリーターになると言うのが常識になってしまった。
こうなると、現在の若者は、難易度の高い正社員になって終身雇用されることにあこがれ、専業主婦になることにあこがれるようになる。

保守化ではなく、単なるあこがれの問題なのだ。
ところが、バブル世代より上の人は、正社員・公務員になることが難しいという感覚がよくわからない。
ニュースでは聞いているけど、どこか納得できていないので、若者が保守化したように見えるのだ。

このように、世間の話題には沿いつつ、新聞程度の一般論を超えた一応の正論を述べている本書。
若者は共感できることが多いだろうし、バブル世代より上の中高年は若者に嫌われないために必読と言っていいだろう。

☆☆☆★(☆三つ半)

他のBlogの反応はこちら
(本書をポジティブに評価するエントリ)
http://d.hatena.ne.jp/Toshi-shi/20100215/1266228769
http://blog.livedoor.jp/seitaisikoyuri/archives/51631625.html
http://pakira01.jugem.jp/?eid=1166139
http://blogs.yahoo.co.jp/kawashiritakehiro/61040095.html
基本的に評価は高い。
ただ、一つだけ苦言を呈すると、サブプライムローン以降の内容は資本主義の終わりのような論調が出てくる。
この部分だけは納得いかないんですよね……。





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