田舎にある普通の生活:ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 [小説]
昨年に発行された辻村深月の新刊。直木賞にもエントリされている。
田舎に存在する、”普通の女の子”の生活を非常にリアルに描いている。そして、その”普通”は時代遅れだし、もはやホラーと言ってもいいぐらいに怖い。
本書のテーマとなっている問題は、それぞれで本が一冊書けるぐらいに濃密なものが多い。
例えば、
・田舎と都会の生活の違い
・娘を虐待する母とそれを嫌いつつも、一時期同居していた娘
・過保護な母と仲の良すぎる娘
・30前後で結婚しない女と、結婚して現実に直面する女
等々。
そして、それらの重たいテーマを無理なく一つの作品として融合させ、ミステリを作り上げた筆者は今まさに円熟期を迎えつつあるのだろう。
それにしても、筆者が描く田舎の”普通”の女性は、男性の私から見るともはやホラーでしかない。
(派遣業務に就く人が多いので)仕事でのステップアップは見えず、合コンしかやることが無く、結婚に寄ってしか自らの人生を切り開くことが出来ない――
ハッキリ言って、途中までは、横溝正史のように、敢えて時代遅れ感を醸し出すことで恐怖を煽っているように思っていた。
でも、誇張はあるものの、おそらくそこに存在するのは現実だ。
私も東京に出てきて長いが、田舎の生活を考えると一定程度のリアリティは存在する。
この難しいテーマをエンタテイメントとしてうまくまとめた筆者の代表作たり得る一冊。
エンタテイメントを楽しみたい人も、社会派の人も読んでみて欲しい。
☆☆☆☆★(☆四つ半)
他のBlogの反応はこちら
(本書をポジティブに評価するエントリ)
http://amkm1971.blog51.fc2.com/blog-entry-71.html
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http://d.hatena.ne.jp/monchan0727/20100503/1272900970
http://yaplog.jp/pippitoruru/archive/1237
(本書をネガティブに評価するエントリ)
http://aliceyuko.exblog.jp/13355778/
意外と賛否両論。評判が先行しすぎたかな?
私個人の感想としては、本書を嘘くさく思える人は、ある意味恵まれていると思います。
今の社会を扱ったミステリとしては、桐野夏生「メタボラ」よりも、本書の方が鋭く・切実だと思うのですが……。ただ単に、年齢的なものからそう感じるのかな??
TBありがとうございました。
うーん。モロ田舎に住んでますからね(^^;)
田舎すぎて合コンとかないですよ。ぶっちゃけ(笑)
辻村作品は同じ女子として微妙に昔を思い出します。
しかも隠している記憶が出てくるんですよね(^^;)
そんな1冊でした。
by igaiga (2010-05-12 08:44)
>igaigaさん
コメントありがとうございます。
私は男性ですが、田舎から東京へ出てきたので、ある程度本書の持つリアルさを理解できてしまうのがなんとも……
という感想です。
面白いんですが、ちょっぴり心が痛むシーンも多いですよね。
by book-sk (2010-05-12 22:57)