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思い込みを正す本:日本はなぜ貧しい人が多いのか 「意外な事実」の経済学 [経済]


新潮選書 日本はなぜ貧しい人が多いのか 「意外な事実」の経済学

新潮選書 日本はなぜ貧しい人が多いのか 「意外な事実」の経済学

  • 作者: 原田 泰
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/09/26
  • メディア: 単行本



経済をテーマにした、NIKKEI NETの連載を選書形式でまとめたのが本書。
マスコミで語られる思い込みと偏見を打ち砕き、経済学に基づいた正しいものの見方を提供してくれる。

日経も、インターネット上のNIKKEI NETではこんなにまともな論説をのせることが出来るのだったら、老人に影響力の高い、紙の媒体でもこのぐらいの論説をのせてくれればいいのに……。

【目次】
第1章 日本は大丈夫なのか
第2章 格差の何が問題なのか
第3章 人口減少は恐いのか
第4章 世界に開かれることは厄介なのか
第5章 経済の現状をどう見れば良いのか
第6章 政府と中央銀行は何をしたら良いのか


連載形式のものを一冊にまとめた本書は、全6章64テーマについて、世間の思い込みを正しいデータで打ち砕く、ある種の爽快感を伴う内容に仕上がっている。

選ばれているテーマも、「若年失業は構造問題なのか」とか「」地域間の1人当たりの所得格差は拡大したのか」とか「『高齢化で医療費増』は本当か」といった、新聞・TV等でよく見られる俗説が取り上げられており、64のテーマ全てを興味深く味わうことが出来る。

そして、なかでも、私が特に感動したのは、第3章「人口減少は怖いのか」の後書き。ちょっと長いが、引用させてもらう。
 人口減少は怖くないが、高齢化は怖い。ただし、それは、高齢者が、自分たちが産み育ててはいない若者の負担で、老後の生活を維持しようとしているからである。現在及び近過去の高齢者は、子供を産まなかったし、育てなかった。しかも、生まれてきた若者に良い職を与えることも出来なかった。だから、数が少なく、貧しくもなった若者に依存して、高齢者が、高い年金を得たり、良い医療を受けたりすることはできない。これは当たり前のことではないか。高齢者が、自分たちが悪いから仕方がないと諦めてくれれば、何の問題もない。諦めてくれないから問題になるだけだ。
 高齢者優遇を改めても、高齢者が生活出来なくなる訳ではない。現在の豊かな日本の年金を半分にしても世界一豊かなアメリカと世界一の福祉国家であるスウェーデンに劣らない。すぐさま高齢者へのサービスを削って、若者を負担から解放すべきだ。
 人口が減るだけなら問題ない。国力は、大雑把に言って、1人当たりの力×国民の数だから、人口が減れば国力は低下するだろう。しかし、1人当たりの力が数の減少を補えば、国力は落ちなくてもよい。また、そもそも、国力が重要だろうか。私たちがあこがれる国は、人口の多い国ではなくて、一人一人が豊かな国、そして、その豊かさを魅力的に使っている国ではないだろうか。

私のように30代の人間からしてみれば、至極当たり前、かつ、もっともな意見なのだが、この当たり前の意見を新潮選書という若干古めかしい(失礼)媒体にまとめるのはおそらく勇気がいる。新潮選書のメインターゲットはもう少し上の世代だろうから。
そして、こうした言説をまとめて本にするという勇気が、世の中に良い影響を与えてくれることを私は願っている。


身近な俗説に対して、正確なデータと常識的な観点に基づいて、思い込みを粉砕して真実を明らかにしてくれる本書。
本の見た目は地味なのだが、探し出して読むに値する、価値と味わいのある一冊である。

☆☆☆☆(☆四つ)

他のBlogの反応はこちら
(本書をポジティブに評価するエントリ)
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/51712945.html
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/03/post-1192.html
http://kia357.blog125.fc2.com/blog-entry-148.html
http://d.hatena.ne.jp/sumau/20091205/p1
http://bestbook.livedoor.biz/archives/50858794.html
http://blogs.itmedia.co.jp/london/2010/01/post-a056.html
高評価の人が多い。そして、専門家筋も高評価。
自称”エコノミスト”が全て筆者のようなまともな”エコノミスト”だったら、日本の経済政策がここまで迷走することはないんじゃないかと思ってしまった。





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