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賢者は歴史に学ぶ:戦略の格言―戦略家のための40の議論 [その他]


戦略の格言―戦略家のための40の議論

戦略の格言―戦略家のための40の議論

  • 作者: コリン グレイ
  • 出版社/メーカー: 芙蓉書房出版
  • 発売日: 2009/08
  • メディア: 単行本



英米両政府のアドバイザーや大学教授、民間シンクタンクの研究員と豊富な経歴を持つ筆者が、軍事戦略について書いた一冊。
どっしりとしていて読み応えがあるが、読んだ後には確実に力が身についた実感を得ることが出来る。教養の持つ威力を実感できる本である。

【目次】
イントロダクション―大きな問題を正しく理解するために
1 戦争と平和
2 戦略
3 軍事力と戦闘行為
4 安全保障とそれに対する脅威
5 歴史と未来
あとがき―戦いのための教訓


●トゥキディデス、孫子、クラウゼヴィッツが語っていないことに真理はない
本書はタイトルにもあるように、軍事戦略の格言について書かれた筆者の小論文集という形態を取っている。
そして、筆者が”格言”という一見古くさいテーマを選んだのは、歴史の流れに晒された上で、耐えて残ってきたものにこそ真理があるという信念からである。

そして、本書の内容は、その信念が正しいことを骨身にしみて分からせてくれる。
重装歩兵の時代から、核兵器が装備され無人の戦闘機がピンポイントで標的を爆撃する現代に変わっても、戦争を貫く思想・原理は変わっていない。一番大切なのは人間であり、その人間が戦争をする以上、古代から変わらないものは確実に存在するのだ。

歴史を学ぶことの重要性を説く人は多いのだが、本当に歴史の力を実感できることは少ない。
本書は、その数少ない歴史の威力を実感できる機会になること間違いなしだ。

●日本人にはなじみの薄い軍事戦略
本書のもう一つの価値は、日本ではなじみの薄い、軍事に関する戦略をテーマにしていること。
本書にもあるが、どんなに平和な時代であっても、軍事・軍隊の価値が無くなることは決してない。ところが、日本では戦力不保持という憲法の建前もあり、軍事に関する研究・戦略がおおっぴらに語られることはほとんど存在しない。
そうした状況だからこそ、必然的に外国の書物等から知識を取り入れざるを得なくなるのだが、本書はマニアックに偏りすぎていないので、軍事に関する基本的な見方・考え方を取り入れるにはほどよい出来だと思われる。

☆☆☆☆(☆四つ)

なお、このエントリでは”軍事戦略”という言葉を用いて本書を紹介している。が、筆者は自らのことを”戦略家”といっており、”戦略”とは政治と戦闘をつなぐ橋のようなものだと述べている。
本書を読んだ人なら、”軍事戦略”という私の使った言葉が正しくないことは分かるだろうが、初手から単に”戦略”と書くと、本書の内容が伝わらない恐れがあるためあえて”軍事戦略”とした。

他のBlogの反応はこちら
http://fsmism.exblog.jp/11364674/
http://tomo-labo.blogspot.com/2009/08/40.html
http://kitakitune2009.blog84.fc2.com/blog-entry-90.html
専門的な方のエントリが多い。
一般受けは難しそうな内容だし、分量は多いし、値段も高価。それでも、多くの日本人に読んで欲しい一冊です。






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