派遣社員の感じる憂鬱:派遣のリアル [社会]
派遣労働者にインタビューをして、そこから問題提起をした一冊。
実情を知った上で問題提起をする形式になっていて、一応の説得力がある。
【目次】
第1章 日給6000円で働く人たち
拡大する日本の人材派遣市場
派遣会社の形態あれこれ ほか
第2章 10分で分かる派遣の歴史
1985年までは禁じ手だった日本の派遣ビジネス
1966年に米国の人材派遣会社が日本に上陸 ほか
第3章 使い捨てられる女性派遣の現実
理想と現実のギャップが大きい派遣の世界
増加する女性の派遣社員 ほか
第4章 ネットカフェ難民と団塊派遣
ホームレスが減少する傍らで増える「ネットカフェ難民」
「ネットカフェ難民」になりやすい「ワンコール・ワーカー」 ほか
第5章 労働ビッグバンは派遣に何をもたらすのか?
「労働ビッグバン」は派遣社員を救えるのか?
骨抜きになった労働契約法案 ほか
派遣労働者についてはリーマンショック以来、さんざんマスコミで取り上げられたため、今読むと本書のすごさが伝わってこない。
ところが、本書が書かれたのは2007年の8月。
TVドラマ「ハケンの品格」などで、スペシャリティを持って派遣として働くと言う幻想がまかり通っていた時代だ。
この、専門性を持った派遣という幻想は、雇用主による搾取を防止するために、旧派遣法で派遣が認められていたのが専門性の高い職種に限るという建前があったからだ。
とはいえ、実際は今と変わらない調整可能な労働力としての派遣が多かったらしいが……。
今から本書を読むと、小泉政権下の好景気の元で結果として表に出てこなかった派遣の問題を鋭く言い当てていることに感心する。
たしかに、本書は解決策を示してはいないが、問題提起の部分だけでも読む価値は十分に存在する。
☆☆☆★(☆三つ半)
他のBlogの反応はこちら
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http://kitanomori-hacci.seesaa.net/article/73407467.html
http://jinkichi.cocolog-nifty.com/bonjin/2008/02/post_16df.html
http://sociology.jugem.jp/?eid=232
私は小泉政権の実施した政策は概ね正解だと思っているし、あの路線以外に日本が復活する道はないと思っている。なので、小泉政権下の政策で派遣社員が苦しんでいるという論調は間違いだと断定できる。
(本書が出た頃は好景気で、派遣の問題の多くは顕在化していなかったのだから)
それでも、本書の問題提起は無視していいものではない。解決策は単純ではないだろうが、どこかで取り組まなくてはいけないのだろう。
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