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ハンディキャップマッチ:代替医療のトリック [科学]


代替医療のトリック

代替医療のトリック

  • 作者: サイモン シン
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/01
  • メディア: 単行本



鍼・ホメオパシー・カイロプラクティックなどの代替医療が、いかにも体に効きそうでいながら、実はほとんど効果のないことを科学的に論じた一冊。

医者の出す薬による副作用は怖いけど、鍼灸は古代からの技術だし、副作用がないから安心
とか思っている人は、健康とお金を失う前に必ず読んで欲しい

【目次】
第1章 いかにして真実を突き止めるか
第2章 鍼の真実
第3章 ホメオパシーの真実
第4章 カイロプラクティックの真実
第5章 ハーブ療法の真実
第6章 真実は重要か?


鍼灸のような伝統的なものから、アガリクスのような明らかに怪しげなものまで、代替医療の宣伝文句は大体同じだ。
「この療法は患者個人に併せて一人一人違う治療を行うので、科学的に結果を測定することは出来ない」
「個々の症状ではなく、体全体を健康にするので、科学的な測定になじまない」
「でも、この治療が効いたという研究・実例が存在する」
ほとんどはこのパターンで効果を宣伝している。

しかし、上記のような文句は、本当に”科学的な”効果測定方法を知らないから出てくるのだ。
医療の効果を測定する科学的な標準となっている手法は、二重盲検。この方法だと、どんなにオーダーメイドされていても、体全体を対象としていても、医療としての効果があるものと、プラセボ(プラシーボ)効果しかないものをハッキリと区別することが出来る。

そして、今までに研究されてきた結果から、代替医療は基本的には効果がないことが明らかになっている
本書を読むと、怪しげな代替医療を試す前に医者に行くことの重要性と有効性がよくわかる。
そして、これからも手を変え品を変え出てくるであろうインチキ治療にだまされることは無くなるだろう

この基本的な部分だけでも、本書は全国民が眼にするべき価値が有る一冊である。

そして、本書はさらに重要な問題提起も行っている。
それは、効果のある通常医療は様々な制約があってその威力・正当性をアピールしにくいのに対して、代替医療は何でもありの状態で患者を騙すことが出来る。

例えば、通常の医薬品だと副作用はきっちりと明示しなければならないし、まともな医者だと「100%必ず直る」と言うことは難しい。
ところが、代替医療においては「自然由来だから安全」と言った意味不明な安全表示で良いし、「使用者は必ず効果を実感しています」と言った詐欺まがいの有効性アピールも可能だ。
これは言うならば、通常医療はサッカーのルールで闘っているのに、対する代替医療の側は手を使うことが認められているようなものだ

これではハッキリ言って勝負にならない。

上でも書いたように、国民全てが本書の様な本に目を通して自衛するのが一番なのだが、現実にそういったことを求めるのは難しい。
ならば、厚生労働省の官僚には是非本書を読んで、通常医療の側に科せられたハンデを軽くして欲しい。
これは結構切実な願いだったりする。

☆☆☆☆☆(☆五つ。満点)

他のBlogの反応はこちら
(鍼灸院の院長先生の反論)
http://blog.livedoor.jp/matsumoto_mtc/archives/51743338.html
(お医者さんの感想)
http://blog.m3.com/ishi-atama/20101213/1
(本書をポジティブに評価するエントリ)
http://tamagodon.livedoor.biz/archives/51517463.html
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/03/post-1185.html
http://kumaguma-soap.blog.so-net.ne.jp/2010-11-19
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2010/02/post-1dad.html

日本には漢方薬を筆頭に、鍼灸、按摩など、西洋とは趣の異なる代替医療があふれています(昼間のTVCMはもっとたちの悪い代替医療で埋め尽くされている)。
本書の議論がそのまま日本で当てはまるわけではないですが、日本人でも考え方の基本として、本書は読んでおく価値が有ると思います。





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