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民主主義を止めよう:民主主義がアフリカ経済を殺す 最底辺の10億人の国で起きている真実 [社会]


民主主義がアフリカ経済を殺す 最底辺の10億人の国で起きている真実

民主主義がアフリカ経済を殺す 最底辺の10億人の国で起きている真実

  • 作者: ポール・コリアー
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2010/01/14
  • メディア: 単行本



『民主主義は、最悪の政治形態である。・・・他のあらゆる政治形態を除けば』

と、ネットでよく見かけるコピペから入ったけど、民主主義は本当にベストの選択なのだろうか?
本書を読むと、とてもそうは思えない。

本書は、「最底辺の10億人 最も貧しい国々のために本当になすべきことは何か?」の続編で、民主主義が唯一・最善の政治体制ではないことが明らかにされている。



【目次】
序章 最底辺の国々の恐るべき逆説

第一部 現実の否定としてのデモクレイジー
第一章 選挙と暴力
第二章 民族間の権力闘争
第三章 煮えたぎる釜のなかでーー紛争後調停

第ニ部 現前する暴力と対峙せよ
第四章 銃ーー火に油を注ぐ武装
第五章 戦争ーー破壊の政治経済学
第六章 クーデターーー誘導装置のないミサイル
第七章 破綻国家コートジボワール
第八章 国づくりの過程と条件
第九章 餌をもらうくらいなら死ぬほうがましか?
第十章 現実の変革のさなかで


民主主義の良いところは、一人一票の原則の下、全ての国民が政治に参加することが出来るところ。
全ての国民が等しく権利を持っているので、人権を侵害したりする政治家には票が集まらず、落選することになる。この原則通りに民主主義が運営されていれば、民主主義は唯一かつ最善の選択肢になるはずである。

ところが、民主主義には弊害がある。
有権者の過半数を抑えれば当選できるので、特定の支持集団に対する利益誘導が有効になるのだ。
日本でも、労働組合に支えられた民主党は正規雇用の労働者の利益のために、非正規雇用労働者との間の格差問題を放置している。
これも重大な問題なのだが、先進国では、弊害といってもこの程度である。

これが最底辺の10億人の国々では、もっとひどい政治が行われる。
それらの国では国民としてのアイデンティティよりも、民族としてのアイデンティティの方が強いため、政治家は特定の民族に対する利益誘導や、他の民族の弾圧を行うことになるのだ。そして、有権者は政治家の政策ではなく、民族に基づいて投票する。
こうした国々では、民主主義である限り、国としての発展よりも、民族の利益の方が優先されてしまうのだ。
例えば、全国民が使える道路や病院と言った公共施設を作るのではなく、特定の民族から優先して公務員を雇用する政策が優先される。

さらに問題なのは、なんちゃって民主主義が横行しており、見た目の選挙は行われるが、不正選挙で実質的な当選者が決まってしまっているという点だ。アフリカの国々では、そうした選挙は一般的で、民主主義の皮を被った独裁が多く行われている。
(そして、そうした独裁は、民主主義の悪い部分だけを引き継いで、露骨な利益誘導になりやすい)。

全体的にみて、筆者はアメリカ人なので、民主主義を神聖視していて、民主主義が最善でないことに衝撃を持って本書を書いているよう見受けられる。
しかし、アジア人の私たちからすると、ある種の独裁が民主主義より優れていることは違和感なく受け入れられるだろう。

その上で、現実にあった最善の政治体制を考えさせられる一冊である。

☆☆☆☆★(☆四つ半)

他のBlogの反応はこちら
http://d.hatena.ne.jp/akamac/20110211/1297433601
http://tkido.com/blog/3691.html
http://books-biz.com/archives/1592481.html
http://dream4ever.livedoor.biz/archives/52158133.html
http://neto.blog10.fc2.com/blog-entry-5724.html
http://d.hatena.ne.jp/smectic_g/20100522/1274512961

概ね好評。
最底辺の10億人 最も貧しい国々のために本当になすべきことは何か?」を読んでから読むと、いっそう味わい深い。





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コメント 2

Sanchai

こんにちは。偶然ですが私もこの本は少し前に読んでいたので、トラックバックさせていただきました。民主主義の多数決のルールは、民族構成が多様な国ではマイノリティを周縁化する方向に働いてしまうのではないかという研究は結構あるようですね。
by Sanchai (2011-03-07 21:24) 

book-sk

>Sanchaiさん
コメントありがとうございます。

民主主義は国民が政治参加していることによる満足感は与えてくれるのですが、効率性とか優秀な指導者は与えてくれないことがよくわかる一冊ですよね。
民族意識が国民意識よりも高い国においては民主主義は向いていないことを考えると、中国なんかは意外とうまい政治体制を選択しているのかもしれませんね。
by book-sk (2011-03-19 23:33) 

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