SSブログ

全体主義思想の本:なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか [社会]


なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか(祥伝社新書226)

なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか(祥伝社新書226)

  • 作者: 若宮 健
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2010/12/01
  • メディア: 新書



まず、私はパチンコ廃止論者であることを明言しておく。

その上で、ネットで評判の良かった本書を読んだのだが、
全く評価できない。

なぜか?
筆者はギャンブルは悪であると言う価値観のもとに、ギャンブルを廃止できない日本は韓国よりも遅れていると論じているためだ。

【目次】
一章 なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか
 韓国のパチンコ全廃を報じなかった日本のマスコミ
 タクシードライバー、キム氏の話
 韓国人向けカジノ「江原ランド」のその後
 玉は弾かない韓国独特の「メダルチギ」
 法案成立の翌月には、パチンコ台一〇〇万台を没収
 政府高官にまで逮捕者が出た「パダイヤギ事件」
 韓国首相による国民への「お詫び談話」
 製造、販売業者にも及んだ徹底した不正の追及
 抵抗勢力による妨害はなかったのか?
 韓国で起こったパチンコによる事件、事故の数々
 読む者の胸を打つ「朝鮮日報」の社説
 日韓共通のパチンコによる家庭崩壊
 「数千人の利益のために、数百万人を泣かせる」業界
 廃止後の闇営業も徹底摘発する韓国
 日本のパチンコは、どこでおかしくなったのか?
 なぜ韓国人は、自国でパチンコが流行していたことを知らないのか?
 小沢氏に、パチンコの規制緩和を持ちかけた李大統領
 パチンコ全廃による経済効果とは?
 韓国CBS放送の取材を受ける

二章 なぜパチンコは、廃止されねばならないのか
 パチンコ店店員も依存症になる世界
 ターゲットは、年金生活者と主婦
 月一〇〇万負けるのは、珍しくもなんともない世界
 パチンコ店にATMという恐怖の光景
 店内は、まさに賽ノ河原
 母を殺し、金を盗ってパチンコ店に行った息子
 パチンコの害を批判する韓国、しない日本
 業界が「依存症対策セミナー」を開く偽善
 自動販売機に規制がかからない不思議
 客が絶対に勝てない、恐怖の「顔認証システム」
 警察に対する業界の涙ぐましい心づかい
 主婦を直撃する貸金業法の改正
 パチンコ店のイベントに、天下の横綱がやってくる
 「子ども手当」もパチンコ台に消える
 裕次郎が草葉の陰で泣いている
 パチンコ問題に目を瞑るマスコミの責任
 パチンコ業界を告発した記事がボツになる国
 一円パチンコで、問題の解決にはならない
 法律には必ず抜け道が用意されている国・日本
 家族まで巻き添えにする、パチンコ悲劇の深刻さ

三章 なぜ日本は、パチンコを廃止できないのか
 パチンコ業界のアドバイザーに名を連ねる政治家たち
 民主党による呆れはてた「パチンコ支援プロジェクト」
 業界を代弁して国会で恫喝する民主党議員
 パチンコ業界の損失に、国家賠償を要求
 今も相次ぐパチンコがらみの殺人事件
 パチンコ被害者に光明を与える訴訟事件
 韓国では、カジノ被害者の原告勝訴
 韓国にあって日本にはない、判断のスピード
 車内マナーでも韓国に負けている日本
 正面切ってパチンコ賭博を合法化しようとする政治家
 パチンコ問題に集約される日本の病根
 なぜ大新聞が、パチンコの全面広告を掲載するのか
 金に目が眩み、口を封じられたマスコミ業界
 大阪市議から届いた一通のメール
 地方から産声をあげるパチンコ反対運動
 パチンコ店の出店を認めた最高裁の判断
 元警視総監が会長を務める「保通協」とは?
 警察官が生活安全課に行きたがる理由
 北朝鮮への献金の実態とは?
 規制をかいくぐって生きのびるパチンコ業界
 韓国にできて日本にできないという恥辱


筆者はギャンブルは悪であるという価値観のもと、ギャンブルは全廃すべき、故にパチンコも廃止しなくてはならないという三段論法で本書を書いている。

では、急性中毒や肝炎を引き起こし、交通事故や家庭崩壊の原因となることも多いアルコールは禁止すべきではないのか?
有毒物質を撒き散らし、がんを引きをこすたばこは禁止薬物に指定すべきではないのか?
非生産的な時間を発生させ、ひきこもりを助長する一面のあるテレビゲームは禁止すべきではないのか?

私は、人々の自由を国家が制限するのは極力避けるべきであると考えるので、
ギャンブルを禁止することを目的として、パチンコ廃止を主張する意見には全く与しない。
筆者の考えを突き詰めていくと、酒もタバコもゲームもスポーツも禁止され、労働以外の余暇はほとんど認められない窮屈な社会になってしまうだろう。

パチンコの問題はギャンブルだからではない。 公営競技を除けば、パチンコだけが特権的に合法ギャンブルとなっているためだ。
それなのに、パチンコには、筆者が言うように、警察官僚との癒着や脱税と行ったグレーなお金の流れがあるし、当たりの確率を操作できるのでギャンブルとしての公平性にも疑問が残る。
そうしたインチキ賭博が合法であることを問題視すべきだろう。

むしろ、ギャンブル自体はゲーム産業の強さなどを考えると、日本が世界に輸出できるコンテンツになる可能性を秘めていると思われる。

以上から、私は本書の立場には全く賛成できないし、本書は「韓国ではパチンコが廃止できた」「日本で廃止できないのは恥ずかしいし、おかしい」という論調で終わっているので、「どうすれば廃止できるか?」といった前向きの議論になっていないという欠点もある。

考える切っ掛けにはなるけど、手放しでは評価できない一冊だ。

☆☆★(☆二つ半)

他のBlogの反応はこちら。
http://flowrelax.blog43.fc2.com/blog-entry-831.html
http://d.hatena.ne.jp/sakaik_life/20110323/p1
http://d.hatena.ne.jp/naokura/20110403/1301845167
http://d.hatena.ne.jp/yoichiyy/20110328/1301262110
http://d.hatena.ne.jp/tipitu/20110319/1300545636
http://meganesan.shiga-saku.net/t589699
パチンコにを擁護するものではないが、本書に対して否定的なエントリがおおい。
Wikipediaで筆者の来歴を見たのだが、それが本当なら、レポート・論文のようなロジカルな文章を書いた経験は少なそうだし、エンタテイメントとして本を書いた実績も少なそう。
そのあたりが、読んで面白いわけではなく、穴の多い論理の本になっている原因かもしれない。
編集者がもう少し詰めていれば、目の付け所は良いだけに、もっといい出来になったと思われるのだが……。






nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。