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沖縄に行きたくなる小説:テンペスト [小説]


テンペスト  上 若夏の巻

テンペスト 上 若夏の巻

  • 作者: 池上 永一
  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2008/08/28
  • メディア: 単行本



テンペスト 下 花風の巻

テンペスト 下 花風の巻

  • 作者: 池上 永一
  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2008/08/28
  • メディア: 単行本



そうだ、沖縄に行こう。
という気持ちにさせてくれる小説。

NHKドラマのあらすじには、愛だとか、運命だとかの言葉が出てくるが、本書における一番の魅力はそこではない。

沖縄の美しさ。
それに尽きる小説なのである。

未読の人のためにあらすじは割愛するが、本書は幕末の沖縄を舞台にした小説。
江戸幕府と清国という二大強国に挟まれた、弱小ではあるが、非常に美しい国沖縄(琉球王国)。

その美しい舞台に、魅力的なキャラクターで、激動の時代を生き抜く琉球王国の中枢部を描いたのが本書。

私はテレビはあまり好きではないので、ドラマ版は知らないのだが、本書はぜひとも小説で見てほしい。
その理由は2つ。

1.本書の美しい沖縄を想像するには、映像よりも想像が向いている。
映像で見れば、首里城・那覇港の美しさをどんな人にでも伝えることができるが、今あるもの以上に美しくはできない。小説であるならば、人が想像力を駆使して読むため、今ある以上に、もっと言うならばこの世に存在しなう美しさまで読み取ることができる。
美しさを売りにしている小説なので、視覚だけではなく、想像力も駆使したほうが楽しみが倍増する。

2.本書で出てくる、書き言葉の重要性
本書の主人公は男と偽って琉球王国の官僚を務める女性。
そして、男性の場面では候文・漢文を駆使して王国の公式文書を処理し、英語を駆使して海外列強と交渉する。逆に、女性としては、琉歌(和歌・短歌のようなもの)で自分の気持を表現する。
候文・漢文の”理”と、琉歌の”情”。このコントラストが、本書のキャラクターに魅力を与えている。
映像版ではどう表現されているかしらないが、文書の部分が重要な役目を占めている以上、小説という文字で読むと、映像とは違った楽しみが得られることは間違いない。

エンタテイメントとしても一級品。更に、沖縄の美しさを十分に表現した作品。
分量は長いのだが、読む価値は十分に存在する。

☆☆☆☆★(☆4つ半)

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本書を読んで、私がまず思い出したのは、浅田次郎の「蒼穹の昴」。
時代や、科挙から始まるストーリー展開。主人公も複雑な事情を抱えて、立身出世を目指す所がそっくり。
それでも、本書のほうが、よく言えば明るく、悪く言えば薄っぺらい。
蒼穹の昴」は圧倒的な人間の本性を描きつつ、最後に浅田次郎流の希望が残ってハッピーエンドという作品なのだが、「テンペスト」はもっと楽観的で、享楽的だ。
どちらが好みかは人によるのだろうが、両者を合わせて読んでみると、より一層楽しめるだろう。





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