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恐怖・蔑視を超えた等身大の中国認識のために:われ日本海の橋とならん [社会]


われ日本海の橋とならん

われ日本海の橋とならん

  • 作者: 加藤 嘉一
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2011/07/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



中国は日本を敵視している全体主義の国で、中国国民は自由を制限され、苦しい生活をしている。
と、こんな一昔前の中国観を持っている人にはぜひ読んで欲しい一冊。

確かに、彼の国の政治体制は日本や欧米とは異なるが、一概に遅れた国として認識するのは間違えている。
本書は、見下したり、恐れたりするだけではなく、実態としての中国を理解する助けになる。

【目次】
第1章 中国をめぐる7つの疑問
 中国に自由はあるのか?
 共産党の一党独裁は絶対なのか? ほか
第2章 僕が中国を選んだ理由
 環境は人をつくり、時代は人を変える
 世界で勝負するには英語が必要! ほか
第3章 日中関係をよくするために知ってほしいこと
 日本だけが抱えるチャイナリスク
 地下鉄で胸ぐらを掴まれる ほか
第4章 中国の民意はクラウドと公園にある
 インターネット人口5億人の衝撃
 街に溶け込むインターネット ほか
第5章 ポスト「2011」時代の日本人へ
 「自分にできること」はなにか
 日本に寄せられた共感と敬意 ほか


本書の構成は、日本の高校に通っていた筆者が北京大学へ国費留学(中国側の費用負担)し、中国でコメンテーターとして大成するまでの経験を通じて、中国という国の実態を描く内容となっている。

amazonのレビューを見ると、筆者が中国の費用で留学し、共産党幹部と面会する機会を与えられるなどの立場にいることから、中国寄りの人物として、その言論の信ぴょう性に疑問を呈する様なレビューも見られる。
(平たく言うと、中国に懐柔されてしまった言論人という位置づけの認識だ)

だが、その認識は正しくない。
社会人ならばわかると思うが、自分が仕事を通じてよく知っている対象は、知っているからこそそのいいところを多く見つけることができる。
官庁営業をやっている人は、良い役人・優秀な役人を多く知るがゆえに、公務員バッシングに反対したくなるようなものだ。

筆者の経歴・立場は頭においた上で、筆者が語るナマの中国は日本のマスコミでは知ることのできない貴重な情報としてインプットしていけば良いはずだ。

そして、筆者が語る中国の実態は色々なことを深く考えさせられる。
どの点に感心するかは人によって異なるのだろうが、私が一番心に残ったのは、独裁(一党集中)という政治体制の是非

民主主義がアフリカ経済を殺す 最底辺の10億人の国で起きている真実」などを読むとわかるが、アフリカの国は民主主義の国が多く、民主主義であるがゆえに失敗している。
(アフリカで一番成功している南アフリカも、残念ながらアパルトヘイトの時代から民主化を経て経済・治安は下向いているとする記述も多い。)
逆に、アジアに目を転じてみると、韓国・シンガポール・中国など、経済的に発展途上国を脱しつつある国の多くは一党独裁の政治体制によってそれを成し遂げている(韓国は豊かになった後民主化した)。
我が日本でも保守合同で自民党が出来なければ、ここまでの経済成長は成し遂げられたかどうか疑問だ。

そう考えた時に、日本では非難されることの多い中国共産党の一党独裁も一概に悪いといえるかどうかは非常に悩ましい。
言論の自由が制限されていたり、”グレート・ファイアウォール”というインターネットの世界に対する挑戦のような国家運営をしていたり、問題は多いが、それを補う事のできるメリットを得ているのかもしれない
(だからといって、私は日本が中国のような政治体制になったら国外脱出を考えますが)

このように、筆者の語る中国の実情はマスコミの視点とは一味違っており、我が国と比較して色々なことを考えさせられる。中国という国とは関わらざるを得ない今の日本人だからこそ、読んで見る価値のある一冊だ。

☆☆☆☆(☆4つ)

他のBlogの反応はこちら。
http://torikomesi.exblog.jp/17480209/
http://pohcho.exblog.jp/14783087/
http://guapojp.blog121.fc2.com/blog-entry-255.html
http://d.hatena.ne.jp/travelbookcafe/20110908/1315479757
http://www.dreams.gr.jp/~koji/essay/2011/10/post-2549.html
http://takokakuta.asablo.jp/blog/2011/09/21/6109391

「太平洋の橋」はこの国に何人もいたし、十分に根付いている(メンテナンスはもちろん重要だけど)。
だが、それに比べて「日本海の橋」はまだまだ細く、少ない。どちらを重視するかは人それぞれでいいと思うが、選択肢を広げ、多様性を確保するためには、筆者のように「日本海の橋」となる人はもっと増えてもいいのだろう。






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