これで経済学を名乗っちゃいけないのでは・・・:労働経済学入門 新版 [経済]
大学の教養の授業で使われそうなたぐいの入門書。
社会人ではなく、学生を対象とした作りなので、やや内容がアカデミックに寄っている。
この手の本は、意見が中立なのはいいのだが、結局何が言いたいか、学問がどう役に立つのかが不明確になるきらいがあり、本書のその例外ではない。
【目次】
第1部 労働経済学への招待
第1章 人が働くということ─労働経済学への招待─
第2章 賃金と雇用の決まり方
第3章 データでみる日本の労働市場
第2部 労働経済学の基本問題
第4章 なぜ人によって賃金は違うのか
第5章 「学び」と「訓練」
第6章 人が会社をやめるとき
第3部 誰もが安心して働ける社会をめざして
第7章 高失業の経済学
第8章 女性を働きやすくする
第9章 若者を働きやすくする
第10章 高齢者を働きやすくする
第11章 労働経済学の意義
本書の内容は、労働経済学とはどういう学問か(労働者の問題を経済学的視点から見ていく学問)を解説し、その後、様々な例を解説する作りとなっている。
本書で取り上げられている内容は、社会に出ている人なら一度ならずとも考えたことがあるような重大な問題が多く、真剣に考える価値のある内容ばかりだ。
「なぜ、女性は一般的に男性より給与が低いのか?」
「高齢者の雇用を守るために、新卒採用を抑制することは正義なのか?」
「賃金はどうやって決まるのか?年功序列賃金は今での妥当性があるのか?」
これらの問題に回答、もしくは、考えるためのユニークな視点を与えてくれるなら、労働経済学は非常に価値のある学問だといえる。
ところが、本書を読んだ限りでは、労働経済学は蒸気問題解決の足がかりになりそうにはない。
余りにも、一般的な議論しかなされていないからだ。
例えば、賃金の男女格差については、女性はキャリアが中断することが多く、会社で働ける時間が短いため男性よりも平均的には給与が低くなる。
といったレベルの記述で終わっており、テスト勉強として読むのならともかく、社会人が問題解決のために読むレベルには達していない。
アカデミックな入門書として、公平な記述を心がけるあまりこうなったのだと善意的に解釈したいが、教科書として指定された大学生意外に売ることは考えていないのだろう。
ジャンルとしては、社会人をターゲットに出来るジャンルなのに、若干惜しい気がする。
☆☆(☆2つ)
他のBlogの反応は見当たらなかったので割愛。
経済学者というより、労働組合が書いたといっても信じてしまうような内容でした。
文系経済学が垣間見える……。
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