日本の経済力が裏目に出ている：サッカー選手の正しい売り方 移籍ビジネスで儲ける欧州のクラブ、儲けられない日本のクラブ

サッカー選手の正しい売り方　移籍ビジネスで儲ける欧州のクラブ、儲けられない日本のクラブ

• 作者: 小澤一郎
• 出版社/メーカー: カンゼン
• 発売日: 2012/02/08
• メディア: 単行本（ソフトカバー）

今季、香川真司はドルトムントで大活躍。
高額の移籍金でビッグクラブへの移籍も噂されている。

ところが、セレッソ大阪が受け取った保証金は一億円未満と言われている。
それどころか、岡崎慎司のように移籍金ゼロ円で日本代表クラスの選手に移籍されてしまう例が後を絶たない。

なぜこのような理不尽に見える移籍が行われてしまうのか？それに対する対策は？
ガラパゴスからワールドスタンダードへ移行期にある日本サッカーを取り巻く現状がよく分かる一冊。

【目次】
●第一章　いまＪリーグの移籍市場で何が起きているのか？
●第二章　Ｊリーグ移籍の内実
●第三章　日本における海外移籍、国内移籍の現状とあるべき姿
●第四章　海外の移籍ビジネス最前線
●第五章　選手の価値を高めるマネジメント
●第六章　エージェントの存在意義
●第七章　選手とクラブの幸福な関係とは？

本書の構成は、まず、FIFAの統一ルール導入とともに、世界標準の移籍市場に組み込まれてしまった日本の現状と、FIFAのルールを解説する。
次に、そうした状況での代理人・選手・Jリーグクラブの強化部長といった人々へのインタビューを通じ、移籍に関わる人々の思いを明らかにする。
最後に、筆者が日本のJリーグクラブに対して、欧州の実例を踏まえながら、クラブ経営における選手移籍ビジネスの重要性について提言する。

この中でのポイントは、日本人は豊であるがゆえに、金銭だけではなく名誉・成長・やりがいを求めて欧州へ移籍を希望するというところ。つまり、どんなに高額のオファーを出しても、有力選手は欧州への移籍を諦めてはくれない現状がある。
それを踏まえた上で、Jリーグのクラブがタダで選手を持っていかれて弱体化することを避けるにはどうすればいいのか？

筆者の答えは、ブラジルやアルゼンチンのクラブがそうであるように、移籍金が発生する契約をきちんと締結した上で、移籍金を重要な収入源と位置づけてクラブを運営するというモノ。
日本人のサポーターからは受け入れられない可能性が高いが、方向性としては十分にありうるものだだろう。と言うよりも、人口が減少し、経済が過去のように上向きになる可能性が低いことを考えると、それ以外の選択肢は少なく見える。

ただ、育成リーグ・育成チームを目指すにしても超えるべきハードルは高い。
欧州のチームを相手に移籍金を取ることのできる、法務・交渉に強いフロント。移籍金を払ってでも獲得したいと思わせるだけの実力ある選手。欧州チームのスカウトが見てもソンをしないだけのレベルを保ったJリーグの維持……。
これらのハードルの高さと、足りないものは本書で嫌というほど描かれている。

この現状を踏まえた上で、Jリーグはどのような方向に進むべきか？
サッカーといえば日本代表の試合ぐらいしか見ない私でも、ビジネスの面から十分に楽しめる。
読み応えのある一冊だ。

☆☆☆☆★（☆4つ半）

他のBlogの反応はこちら。
http://bookguidebywingback.air-nifty.com/military/2012/03/post-e473.html
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http://blog.goo.ne.jp/bartret555/e/0797bb267d4f28da560651646ec8f3e4
http://neto.blog10.fc2.com/blog-entry-8053.html
http://mottihina0303.seesaa.net/article/258277483.html

筆者のBlog
http://valenciasoccerlife.blog6.fc2.com/blog-entry-1449.html

今のJリーグの問題点の一つは、能力あるビジネスマンが参入しようとする魅力がないところ。
十分に稼いだ高給取りのビジネスマンや能力ある若手ビジネスマンが趣味と実益を兼ねてサッカービジネスに参入できる環境が出来れば、Jリーグは世界の中で存在感を出せるだろうし、収益も改善していくに違いないのだが……。

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