誤りに関する人間の行動:まちがっている エラーの心理学、誤りのパラドックス [科学]
日本人は間違えを恐れるあまり、人前での発表や質問に消極的であるとよく言われる。
だが、本書を読めば、間違いを恐れる心理は世界共通であることがよく分かる。
では、人間は間違えることをなぜ恐れるのか?
そうした心理が進化の過程で植え付けられたのはなぜなのか?
本書は、間違いに関する心理状態、社会的意義に科学的に迫った本である。
【目次】
第1部 誤りとは(間違い学、間違いの二つのモデル)
第2部 誤りの起源(感覚、自分の心[知っている、知らない、でっち上げる信念、証拠] ほか)
第3部 誤りの経験(間違っているということ、どう間違っているか ほか)
第4部 誤りの受け入れ(誤りのパラドックス、歴史全体からの楽観的メタ帰納)
本書は間違いについて、様々な側面から、科学的に解説している。
それぞれの章で語られる内容はどれも興味深い内容である。
その中でも私が特に興味を惹かれたのは、誤りを認めたくないために多くの人が行う作話について。
例えば、原発事故が起こった後に今までは原発推進だったにもかかわらず「私はずっと原発に反対してきた」と述べるような行動だ(日本でも、そういう人はいっぱいいますよね)。
こうした行動は、別にその人が卑しいから出る行動ではない。
人間として、自然に出てくる行動なのだ。だが、それを知っているのといないのとでは、今後の人間関係に大きな違いが出てくる。
本書を読んでその知識を得た人は、他人が意見を大きく変えて過去を捏造しても腹が立たなくなるし、自分でそうした見苦しい行動をしないように戒めることができるようになるはずだ。
その他にも興味深い内容がいっぱい。この手の科学ネタの書籍は翻訳のほうが圧倒的に質が高い。
本書も十分に興味をそそられるクオリティだった。
だが、一つ残念なのは訳文がイマイチで、非常に読みづらい。
そのデメリットをを覚悟した上で、手に取るといいだろう。
☆☆☆(☆3つ)
紹介できそうな書評エントリが少なかったため、今回は省略。
分量もあるので、読みきるのは意外と難しかったのかもしれない。
タグ:キャスリン・シュルツ ☆☆☆
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