科学を科学者だけに任せる時代は終わった:科学嫌いが日本を滅ぼす―「ネイチャー」「サイエンス」に何を学ぶか [社会]
科学嫌いが日本を滅ぼす―「ネイチャー」「サイエンス」に何を学ぶか (新潮選書)
- 作者: 竹内 薫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/12/22
- メディア: 単行本
一般人は、科学に対してどう向き合うべきか?
ジャンルの専門化が進み、科学者でも隣の研究者が何をやっているか正確に理解できない時代において、一般人は化学の知識をどこまで理解する必要があるのか?
煽りを含んだタイトルがついているが、本書で考えて欲しかった問題は、上の点に集約されるだろう。
【目次】
第1部 ネイチャーvs.サイエンス
ネイチャーとサイエンスの創刊
戦争と科学誌
ネイチャーvs.サイエンス
第2部 科学誌の事件簿
三重らせんスキャンダル
ES細胞スキャンダル
マリス博士と「遺骨」真贋問題
疑似科学というグレーゾーン
第3部 日本の科学を考える
「はやぶさ」で考える日英米の科学土壌
科学における英語問題
ノーベル賞vs.イグ・ノーベル賞
原発事故と科学誌
特別鼎談 科学の役割を問い直す(中川貴雄×中垣俊之×竹内薫)
本書の構成は前半で、世界的な権威であるネイチャー・サイエンスの2誌について紹介し、科学史に残るスキャンダルを通じて科学の問題点を考察した上で、日本の科学における問題点を論じている。
タイトルから見ると第3部がメインに見えるが、そうではなく、3部全てが科学と社会のあり方というテーマで結びついている。
本書でも述べられているように、はやぶさの事業仕分け問題、福島第一原発事故の問題など、一般人が政治を通じて科学に関わらざるをえない状況が頻発している。
日本全体が右肩上がりの時代は、科学を聖域として丸抱えすることもできたのであろうが、縮小の時代に入ってからは科学を聖域として扱うことは出来ない。どこかで切り捨てる判断をしなくてはならなくなる。
そうした背景があるからこそ、科学の素養を持ち、正しく判断することが重要となってくる。
本書はネイチャー・サイエンスを通じて語られているが、究極的には日本人の科学に対する見方が問われている本である。
内容は平易で読みやすいが、考えさせられることの多い一冊だ。
☆☆☆★(☆3つ半)
他のBlogの反応はこちら。
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http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20120518
http://d.hatena.ne.jp/Polyhedron+diary/20120521/1337608127
原発事故で注目されたからか、エントリは多め。
中でも、日本は資源がないのだから、科学技術を疎かにしてはいけないというエントリが多いよう。
確かに、その意見はもっともなんだけど、今(そしてこれから)の日本で基礎研究を含めたすべての科学技ジュルをフルラインナップでカバーしていくことは不可能でしょう。
その時、日本人は政治を通じて科学に対してどのような決断を下すのか。
伝統芸能(文楽)がたどった道を科学がたどる日が近いからこそ、科学そのものに対して考えておくことは重要だろう。
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