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経済学を憎んでいるのか、経済学を理解できないのか……。:商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道 [社会]


商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道 (光文社新書)

商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道 (光文社新書)

  • 作者: 新 雅史
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2012/05/17
  • メディア: 新書



よく調べられているけど、説得力はない一冊。

社会学者の筆者が社会学の面から(経済学を全く無視して)書いた内容なので、読んでいて納得感は全くない。でも、調べられている事実は非常に興味深く、商店街の歴史を概観するには悪くない。

【目次】
序 章 商店街の可能性
第1章 「両翼の安定」と商店街
第2章 商店街の胎動期(1920~1945)――「商店街」という理念の成立
第3章 商店街の安定期(1946~1973)――「両翼の安定」の成立
第4章 商店街の崩壊期(1974~) ――「両翼の安定」の奈落
第5章 「両翼の安定」を超えて ――商店街の何を引き継げばよいか あとがき


本書が素晴らしいのは、商店街の歴史についてよく調べられているところ。
門前町や城下町に発祥の地があり、歴史を誇る商店街はごくごくわずか。
商店街の多くは戦後に農村から出てきた人が、糊口をしのぐために始めた小規模商店が起源。
そして、高度成長期に政治的な力を使って公的保護・補助金を受けて生き長らえてきたのが今の商店街だ。

こうした商店街の歴史を知ることができるという価値が本書のすべて。
本書の歴史(過去を見た部分)は素晴らしい

逆に本書の提言(将来を見た部分)は全然ダメ
本書の提言は、商店街に規制(=免許)による保護を与えて、地域社会の消費空間を守れというもの。

私は筆者に聞きたい。
ロードサイドの大規模店を規制し、商店街の店舗を保護すれば、地域の人は商店街で買い物をするようになると思っているのだろうか?
そんなことは絶対にありえない。

なぜ筆者は「地域の消費空間を守る」という目的のために、ユーザーは不便を我慢すると思えるのだろうか?そもそも、「地域の消費空間」が求められていると思う根拠はなんだろう?

確かに最近は買い物難民の存在が言われるようになってきている。
でも、これから高齢者の中心となる団塊の世代は日本史上で一番車が好きな世代。車を手放せない高齢者が問題になることはあっても、車のおけない商店街に回帰することはあまり考えられない。
また、現在65歳ぐらいの高齢者は、職業によるものの現役時代に仕事でPCを使ったことがある人達であり、高齢者がPCに苦手意識を持つということは過去のイメージに過ぎなくなってきている。

また、筆者は、東日本大震災の時に商店街にはボランティアが来て復興させたが、ロードサイドの大店舗にはボランティアが来なかったことを根拠に商店街の必要性を説いている。

でも、100年に一度の大災害のために無駄な税金と近隣住民の不便の上に商店街を保護するのは、自民党の国土強靭化よりも筋が悪い。
そもそも、商店街をボランティアが復興させたのはそこが住居兼用だったからではなかろうか?
震災から1年以上が過ぎた今、ロードサイドの大店舗と商店街、どちらが復興しているかは正直気になるところだ(多分、小規模な商店街店舗は瓦礫の撤去は早くとも、資本力がないので、まともに商品を仕入れてビジネスを再会するまでには相当の時間がかかったのではなかろうか?)

このように、本書の提言部分は非常に筋が悪いと言わざるをえない。
本書の正しい使い方は、筆者が語る歴史を教養として読んだ上で、現在の商店街を復活させるにはどうするべきか、自分で考えることだろう。

☆☆☆(☆3つ)

他のBlogの反応はこちら。
http://www.ringolab.com/note/daiya/2012/07/post-1676.html
http://honyonderu.blog28.fc2.com/blog-entry-2505.html
http://tukinoie.blog11.fc2.com/blog-entry-890.html
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http://d.hatena.ne.jp/ssaitoh/20120617/1339891955
http://blog.livedoor.jp/fukusuke55/archives/53799472.html

筆者が言うように、経済意外の必要性から保護する政策が成功するなら日本の林業は衰退しなかったはず。
筆者は経済競争力の失われた林業に対して、国土の保全を錦の御旗に強い保護を与えた結果、残ったのは花粉症だけだったという事実について考えてみたことはあろうのだろうか?







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